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異世界版『世界を作ろう』

作者: 青犬



  現代物、異世界物、ファンタジー、文芸。

 ジャンル問わずに手を出しまくる私だが、その中で最も重要な要素が欠けているケースが多い『異世界物』について少し触れてみたいと思う。


 まず私はこの『異世界物』というジャンルについて、まだまだ触れられていないスペースが非常に多いと感じている。

 何故そう感じているかといえば、異世界物の大半は「勇者転生」もしくは「神・女神転生」のどちらかに属している、もしくは縛られているからである。


 正直、勇者転生というのは結果として転生・召喚されてしまっているがよく考えれば理屈として成立していないと考えている。

 例えば「これこれこんな条件で選定した結果貴方が選ばれました」というパターンがよく使われるが、仮にも異世界という世界が存在する以上、対象を「現代っぽい地球っぽい星」に限定した理由が見当たらない。

 別の世界がある以上、地球以外の世界が存在しない理屈はないし、他の世界から無理矢理事象を引っ張ってこられるというのなら、多種多様な世界の人間を召喚するのが当然だろう。

 国や世界を救ってほしい異世界人からしてみれば、地球に限定してリンクを固定する必要性など全くないのである。

 であるにも関わらず、異世界人は「最初から地球が存在していることを知っていて、かつ他に生命体が存在する世界がないことを知っている」ような行動をとっている。

 その理由を説明付けている作品は千に一つか万に一つ程度の割合だろう。



  では、何故そんな低い割合となってしまうのか。

 それはひとえに、世界を構築するより先にその世界に住む人を作ってしまっているからであると私は思う。

 言い直すと、白いだけの空間に人を生み出してから、その人間が生きるために必要な世界を後付で作っているということだ。

 だが、考えてみて欲しい。

 日本が出来る前に日本人が存在するだろうか?

 地球が誕生する前に地球人が生まれるだろうか?

 答えは勿論ノーだ。

 先に世界があり、そこから人が生まれてしかるべきである。

 特に異世界物というのは「異世界」なわけであるから、まず真っ先にすべきことは「世界を作る」ことだ。

 これが疎かになってしまうと、その世界に住む人間も嘘臭くなってしまうし、いわゆる「ご都合主義」以外の道を辿りようがなくなってしまう。

 なんせ登場するシーン以外の世界が真っ白であり、そこには何も存在せず時間すら流れていない。

 そうなると、主人公が才気あふれる、魔法が使えないという設定如何に関わらず「自分が視認出来ない空間の時間を止める」という完全無欠のチート魔法を無自覚に常用しているのである。


  私が異世界ファンタジーを読む上で、日頃常に勿体ないと感じる箇所の半分はここだ。

 内容が面白い、キャラが良い。いくらこれがあろうともその舞台となる世界がおざなりになっていると、全てただのジョークにしか感じなくなってしまうのだ。

 漫画を読む人は思い返してみて欲しい。もしくは読み返してみて欲しい。

 必ずや国、市、町、といった単位の枠組みが存在し、その背景というものが存在するはずだ。

 そしてそこには名も無き人もいて、主人公の意思や行動とは無関係に生活しているはずだ。

 主人公がいかに特別な能力を持とうとも、千万、一億といる人間の一人でしかないという事は決して忘れてはならないのである。



  しかし、世界を作った経験など大抵の人は持ち合わせていないだろうと思う。

 特に小説初挑戦という作家からしてみれば「どうやって世界を作ったらいいのかわからない」と諦めてしまう人も多い筈だ。

 この点を私なりに助言するのなら「まず、自分が好きな景色や、印象に残った土地・建物・施設を思い浮かべてみるといい」という。

 世界を作る、ということはその世界に存在する全ての景色や人間を作るということではない。

 根幹・象徴となる部分を作り、その周辺ではあたかも人が生活しているように思わせるということだ。


 といわれてもわかりづらい、という方はまず東京タワーを思い浮かべてほしい。


 東京タワーがあるということは「東京」という地名らしきものが存在し、「東京タワー」という建造物を作った人間がいるはずだとわかる。

 更に何100mという高層建造物を建造できる文明や技術まで存在しているということが説明せずとも

伝わることだろう。


 小説的に簡単に改めるとこんなところだろうか。

「な、なんだあのバカ高い塔のような建物は?」

「ああ、あれは“東京タワー”といって港区の、いや東京都のシンボルのようなものだよ。 電波塔として重要な役割を持っているんだけど、雷の多い東京都では避雷針の役割も果たしていてね、地元の人は毎日あれに守られて暮らしているようなものさ」

 まで。


 この会話だけでも伝わる情報は多いだろう。

 シンボル、象徴的建造物を用いることで説明が簡単、かつ一気に短縮出来るという一例にはなったかと思う。

 更に「最近はスカイツリーという……」からなる一文を加えれば、文明度の高さを強調して伝えたいのだとわかりやすくなるだろうか。

「夜になるとまた違った顔を……」と加えても面白いかもしれない。



  それはさておき、では異世界に戻ろう。

 まず建造物を設定、注視することで世界の創造を簡単に行えると理解してくれたと思う。

 異世界においてならば王宮や王城とした象徴的建造物を、現代資料を参考にして描写すれば同じく簡単に行える筈である。

 古代建造物や遺跡の類についても同じである。全くの0からではなく、ネットや写真を駆使して既存の物を参考にして描写すればそんなに頭を悩ませることにはならないだろう。


 そして建造物を設定しておくと、表現としてはどうなるかを以下で確認してもらいたい。


 『荘厳華麗な王城があれば、城門から続く大通りがあり、その通りを中心として商店などの建物が立ち並んでいる、多くの民や商人はじめとした様々な人々が行き交う賑やかで明るい都市だ』


 道筋としては「大きいもの」から「小さいもの」へと描写を推移させる。「目立つもの」から「目立たないもの」へと推移させるのがわかりやすい。

 対してこれが逆転し「小さいもの」、人から入るとたちまち印象が変わってしまう。


 『民や商人といった多くの人がいる。人は大通りを行き交っていて、その先に城門がある。さらにその奥には荘厳華麗な王城が建っていた』


 上記と比べて読んだ感想はどうだろうか。

 前者が満遍なく都市を表現したのに対し、後者は王城に注目させることは出来ても、その前の描写についてはほぼ印象に残らないことかと思う。

 これはこれで状況さえ選べば使える客観視した書き方ではあるのだが、世界を作るという目的においては全く不向きである。


 以上、例として二つの文章を用いたが違いを理解してもらえただろうか。

 これが参考になるのであれば願ったりかなったりである。



  とまぁ、アレコレ言ったが、どういった形で表現していくのかは作家自身に委ねるのが読者としての正しい立ち位置であり、内容に関して「やれこうしろ、それこうしろ」だの言うのは読者の枠をはみ出してしまっていることだろう。

 私もついやってしまうのだが、まさしく愚の極みであると自覚し反省している。

 それでもこうしてまた、それも文章として起こしてしまうのは「小説を連載し続けられる作家というのはそれだけで最大評価に値する」と思うからに他ならない。

 最大評価あったものが、タイトル、あらすじ、世界観、文章構成などで削られていき、最終的には0になって読まれなくなってしまう、読めなくなってしまうのはとても勿体ないことなのだ。

 出来るなら読みたい。最後まで読み続けたい。しかし作家の意思が伝わらない。何を表現したいのかがわからない。

 そう感じてしまった時、読者として出来る事は何もない。ただページを閉じるのみとなる。

 そうなってしまうことをなるべく避けられるよう、タイトル、あらすじ、文章表現に続き、「世界を作る」ということを私なりの私見で述べたのが本内容となる。

 これを読んで世界観の構成に力をいれて見ようと感じる作家さんがいたのであれば、私としてはしめたものである。

 そこまでいかなくとも何か感じるものがあったのであれば幸いだ。




  おわりに、今回ばかりは独り言で収まるような書き方は出来なかったが為、前回以前のような前置きはしないものとした。

 この文章を読んで正にしろ負にしろ、何らかの感情を与えることが出来たのであれば書いた意味もあろうかと思う。

 参考にしてくれとは言えないが、なるほどねとでも思っていただけのなら十分だ。これにて締めよう。

 

 願わくば、全ての連載作家に幸と読者があらんことを。

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