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心核のキズナ  作者: 水鳥潤
護衛人現る
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転校生は天界人




 ――次の日を向かえた学校にて。



 本日の教室内はいつもに増して騒がしかった。


 どうやら「転校生がやって来る」という噂で持ちきりのようだ。

 席につくと、その件に関する話をマサが持ち掛けてきた。



 「おはよーハマコー。聞いたか? 転校生が来るらしいぞ。リリアちゃんの時といい、この時期に珍しいよな。女の子だったらいいのに」


 たしかに高2の時期に編入する奴なんてそうはいない。ましてや編入するのが異世界人だなんて、このクラスだからこそある話だ。 


 「……女の子だよ」


 あきれ顔でそう呟くと、マサは俺の肩を掴み食いついてきた。


 「え? なんでわかるのさ?」


 「……さぁな」


 事情を1から説明できるわけがないし、これ以上余計な事を言うのはよしておこう。

 俺はマサから視線を外す。


 ……すると偶然にも桐島の様子を伺えた。今日も爽やかな笑顔が眩しいぜ。


 桐島は数名のクラスメイトと挨拶を終えると、自分の席についく。

 近くにいる俺らに対しても気さくに話しかけてくれる。


 「おはよう」


 「おはよう。ねぇ桐島さん聞いた? 今日転校生が来るんだって」


 「知ってるよ。だって私の家に住んでる子だもん!」


 「え!? そうなの?」


 マサは驚いた表情をする。

 対して、事の元凶である桐島は得意気な顔をした。


 「へへへ、そうなんだよ。すごくいい子だから、仲良くしてね」


 そう言うと、カバンから教科書類を取り出す。優等生の桐島の事だ、家でしっかり予習をしているのだろう。部活もやって学業を怠らないなんて、マジで偉いと思う。


 「もちろんするする! するに決まってんじゃん!」


 ガンマちゃんは俺も良い子だと思うけど、元気が良すぎる一面があるからな。桐島に負荷がかからない程度に、上手くやってくれるといいな。


 テンションを上げるマサを他所に、俺は傍観者気取りで桐島の幸せを願った。




 ※※※※※※※※※※※





 「おーいお前ら席につけよ。噂には聞いてるだろうが、転校生を紹介するな」


 「ガンマで~す。よろしくお願いしま~す」



 SHRの時間。担任の後に続いて教室に入ってきたガンマちゃん。

 ガンマちゃんは教団に立ち、持ち前の明るさで自己紹介をした。



 ひねくれの俺でさえすぐに打ち解けたんだ。彼女は一瞬にしてクラスの輪に溶け込む事となる。


 一時間目の授業が終わると、ガンマちゃんの周りには多くの生徒が集まった。


 「大人気だなガンマちゃん?」


 和気あいあいと談笑する光景を遠くで眺めていると、輪の中からマサが帰還してきた。



 「可愛くて明るかったら、そりゃ人気は出るか。61点って言われたんだけど、こりゃどういう意味かな?」


 ……ああ、マサも点数付けられたんだ。

 おそらく内面を抜きにした「ガンマちゃん的外見指数」なのだろう。それしか思いつかない。


 

 「確かに可愛いな。だがそれ以上に、俺は彼女を羨ましく思ってしまうんだな。転校初日から人気者で、しかも桐島の家に住んでるしさ」


 わざわざ伝える必要のない点数の件から話題を変えると、マサは不貞腐れた表情を浮かべた。



 「おいおい、羨ましいのはハマコーだぞ。あんな可愛い子が知り合いだなんて」


 「知り合いと言うか……リリアの親戚だよ」


 「つまり、ハマコーの親戚でもあるんだろ?」


 「……ああ。リリアと俺は義兄妹だから、そうなるか」


 「……ハマコーの家系って、一体どうなってんだよ? 本当、変わったものらとご縁がある」



 マサの言葉で、自分が変わった環境にいる事を改めて認識させられた。

 変わったものらって、それはマサも含めていいのかとも思った。





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 この日はガンマちゃんに関する話題で持ち切りだった。


 「本当良い思いしてるよね?」


 俺は多くの男子生徒から羨ましがられ続けた。

 リリアの転入から始まり、最近では桐島とも良いお付き合いをしているからな。急に女っ気が増した奴の日常の変化を、心から受け入れない感じだ。



 全ての人に好かれたい。それは贅沢な願いだろう。

 今は信頼できる人が少なからずいるのだから、そう悲観する事ではない。


 ……けれど胸の内に刺さる棘は、なかなか取れそうもない。

 元嫌われ者のメンタルは情けないくらいに脆かった。





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ――学校が終わると、俺はリリアを連れてバイト先のレストランに向かった。


 バイトの入りは17時から。だから家に帰らず、直接レストランを目指す。

 その途中でするリリアとの会話の中心もまた、本日の主役であるガンマちゃんであった。



 「バスケ部のマネージャーにもなってくれたし、桐島に付きっきりだな。これで護衛は完璧だ」


 「そうね。何かあればガンマから私達や天界に連絡が入るし、安心していいと思う」


 「……そうだよな」


 「……なんだか不満そうね。それは桐島さんを守る人が増えたから? それとも桐島さんの家に居候するのが羨ましいの? 他人に非難されるのが嫌なの?」


 「……」


 的を射た言葉に同様を隠し切れない。



 「そう見えるのか。情けないな俺、女の子に嫉妬するなんてさ」

 

 それに1番身近にいる存在が話し相手だからか、つい愚痴をさらけ出してしまった。


 最近の俺はリリアに身を委ね過ぎな傾向がある。どうでもいいやり取りする時でさえ、妙な安堵をしてしまう。同時に口数も増えてしまう。



 「凄いよなガンマちゃんはさ。俺がようやく手に入れた幸せを一瞬で手に入れるんだから。……こちとら今にも崩壊しそうだってのによ」




 前向きで明るい性格のガンマちゃんは人から好かれる。好かれて当然、それだけ人を引き付ける魅力があるから。俺自身、彼女に好意を寄せる者の1人だ。


 ……でも、嫉妬していないと言えば嘘になる。

 その真実を認めるのが億劫で、その思考が過る度に湯鬱な気分になってしまう。


 

 「馬鹿ね。そんなの気にする事ないわよ。事が治まれば、ガンマはみんなの記憶を消して去っていく。もちろん私もそう。……まあ、私が去るのは先の話になるだろうけど」


 愚痴を吐き出す俺に対し、リリアは励ましの言葉をかけてくれた。

 ぽんと背中を押し、俺を抜き去ってゆく。


 



 「……そうだよな。でも俺は、リリアにずっと側にいて欲しいと思っているよ」



 背中を押されると、胸の棘が抜けた気がした。


 目の前の景色が晴れるように明るくなった。


 息をするのも楽になって、胸に秘めた願いまでも出てきてしまった。





 「……」




 前を歩くリリアは歩みを止めた。

 柄にもない台詞を言った後だ。小走りで追いつくと、俺は頬を染めて理由を迫る。



 「あの、反応がないと余計に照れるんですけど?」


 「そ、それは……」



 隣に並ぶと、思ってもみない表情でいるリリアを見れた。

 言葉を詰まらせ、おまけに頬を赤めてやがる。


 ……本当、誰に似てきたんだか。

 

 ふとリリアに出会った日の事を思い浮かべ、彼女のレア顔を拝み続ける。


 「っ……じろじろ見ないで、気持ち悪い」



 ニヤケ顔でいたのがまずかったのだろう。

 罵倒を発すると気持ちが引き締まり、普段通りの凛とした瞳を輝かせるリリアさんであった。



 「安心して。あなたに命を吹き込む方法なんて、一つしかないから。嫌でも私の面倒を見る事になるわよ。ずっと、これからもずっと」


 「はは、そうだったな」


 「くだらない事言わないで働きなさい。そして強くなりなさい」


 「おう」




 リリアとのやり取りで、気持ちが穏やかになれた。

 気分よく店内に足を踏み入れアルバイトに励む事となる。




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