表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心核のキズナ  作者: 水鳥潤
桐島玲奈との交友録後半
58/73

シルバ・クロスニクス


 俺達は神様に会う事なく、騎士団駐屯所までやってきた。駐屯所の建物は高くそびえ立つ塔の様なものであった。

 中に入ると入口近くには受付カウンターがあり、2人の女性が出迎えてくれた。


 「あらリリアじゃない。久しぶり。ずいぶん長い任務だったのね?」

 「その人達は例のお連れさん? 地上人と聞いてるけど、少年の方からは心核の力が感じるし。女の子の方からは……」

 「ただいま。詮索はその辺にしておいてくれるかしら。まだ任務の途中なので」

 「そっか。了解。団長は部屋にいると思うよ。エレベーターで上に向かうといいわ」

 「ありがとう。ではまた後で」


 リリアは顔馴染みである2人と談話し終えると、颯爽にこの場を去る。

 俺と桐島はカウンターの女性に軽く会釈して、リリアの後を追いかけた。


 動力が謎であるエレベータに乗り塔の最上階までやって来ると、目の前には両開きの扉がある。

 リリアは3回ノックをした。


 「リリア・クロスニクスです」

 「どうぞ」


 部屋の中からは渋く色気のある声が聞こえた。リリアを先頭に、俺達は部屋の中に入る。

 中は重役の部屋のようで、本や資料を保管する棚が多く配置されていた。中央には大きな机とソファがある。

 そこにコーヒーカップを手に持つ、40歳位の男性の姿があった。


 「お帰りリリア。友達を連れてきたのか? お父さん嬉しいよ」

 「連絡入れたでしょ? 同行者の2人よ。シルバ・クロスニクス騎士団長様」


 お父さん……クロスニクスね。やはりこの人がリリアの父親か。


 「そうだったね。こんにちは桐島玲奈さん。いやぁ、可愛いお嬢さんだ」


 騎士団長様に話しかけられると、桐島は何かを思い出したように俺の腕を掴んできた。

 俺は嬉し恥ずかしい気持ちになり頬を染める。


 「……どした?」

 「……この人、変態さんなんだよね。危うく紳士な容姿に騙されるとこだった」


 変態…ああ、…そういやリリアが言ってたな。

 俺は警戒の目で団長を見つめた。


 「……リリアちゃん。もしかして変な事2人に吹き込んだ?」

 

 シルバ・クロスニクス騎士団長。

 リリアの義理の父親で上司。高そうな黒色のスーツを着ていて、長い黒髪と顎髭が特徴的な人だ。


 「さぁ、どうかしら」

 「ひどいぞ。私が好意を寄せるのはリリアだけだ」

 「余計に質が悪いのよ。その性癖を他に分散させてほしいくらい」

 「性癖? 娘を大切に思う親のどこが悪い」


 そしてこの人、かなりの親バカであった。

 寛大な心を持つ俺でも少し引いてしまう程に、痛い事をやってのける人だった。

 俺と桐島は2人の口論を黙って見届ける。


 「服や化粧品を支給する親がどこにいる? あなたの送る物はどれも使いにくくて困る」

 「可愛い子には可愛い服を着させないと。言っちゃ悪いがリリアは服のセンスがない。放っていたら、ネームTシャツとか着るだろ?」

 「あれは動きやすくて気に入っている。愚弄するなヒゲ」


 リリアの服を買ってるのかこの人? どおりでリリアの持ち合わせが極端だった訳だ。

 確かに今日リリアが着ている服は可愛い。流行を取り入れているのだろうなと、素人目線からでも何となく伺える。

 だからと言って、親が年頃の子に服を買う行為はおかしいと思うし、なによりサイズを把握してるのが不気味だ。


 これが親バカか。そんな父親にヒゲと罵倒するリリアさんは流石っす。



 「相変わらず口が悪いな。可愛いから許すけど。でもご苦労だったね。君達も、異界の地まで来てもらってすまない。どうぞそちらに腰かけてね」

 「……失礼します」


 俺と桐島は団長の言葉を受け、ソファに腰を下ろした。

 団長は俺達の近くにやってきて、微笑みながら話しかけてくれた。


 「こんちは破馬光助くん。セイジくんから聞いてるよ。入団おめでとう」


 ……ああ、そういやカグラ・セイジはこの人が仕向けたんだっけ?

 あの時は大変な目にあった。そう思った俺はひねくれた言葉を返す。


 「手荒い歓迎に感謝します」

 「はは、セイジくんは手加減しないからきつかっただろ? でもお陰で君の事を色々と見て量れた。私は安心してリリアを任せられているよ」

 「そんな、任せるだなんて。俺はリリアにずっと迷惑をかけてますから。本当にすみません」


 機嫌良くする団長に対し、俺は申し訳ない気持ちになった。

 団長はそんな俺の肩に手を置いた。


 「気にするな、リリアが勝手にしている事さ。その分君には活躍してもらうから」

 「……はい」


 自分の娘が俺との出会いにより何度も危険な目にあっている。それをこの人は知っているだろう。けれど俺の事を一切責めようとしなかった。


 人を束ねる位置に立つのだから、もっと厳格であってもいいのに。むしろ寛大な性格だからこそ、部下に慕われたりするのだろうか? そんな印象を俺は団長に対して持った。




 だから次に団長が取る行動とはギャップがあって、俺は戸惑いを隠す事ができなかった。



 「……さて、自己紹介はこれくらいにして本題に入ろうか」



 団長は指を鳴らし音を出す。

 すると部屋に人が数名押し掛けてきた。



 俺と桐島は多くの騎士団員により取り囲まれた。



 「これは一体?」

 「ごめんね桐島玲奈さん。君は我々が厳重に監視する事になっている。辛い思いをさせるが、しばらく我慢してくれ」

 「な、何を言ってるですか団長さん!?」

 「……彼女の身柄を確保しろ。少年は暴れると困るから取り押さえて」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ