ユニゾンスキル
「……という事だけど、どうかしら?」
「乗った、やってみよう」
リリアの策はとてもシンプルだった。
どでかい一撃をかます、その一点につきる。重要となるのは2人の呼吸を合わせる事。それに備える下準備は追って説明される。
密談を終えた俺とリリアは視線をカグラ・セイジに向けた。
「話はまとまったか? その様子だと、素直に諦めるつもりは無さそうだが。一応忠告はするが、例え力を合わせても俺には勝てないぞ」
「勝てるとは思わない、一泡吹かせるの」
そう言うと、リリアはさっきとは違った青色の刀を手にした。俺の持つフレイムベルと型こそ似ていたが、色の違いから対称的な印象を受ける。
「アイスベル。私専用の外錬装具。つい先日修理が終わり、ようやく手元に戻ってきた。心核の消費が激しくて、今となれば使用制限付きの代物だけど、出し惜しみする余裕はない 」
「外錬装具?」
「天界の技術班が考案した人工装具の事。各個人が保有する具象装具と比べても遜色ない力を発揮するけど、心核の消費は威力が上がるにつれて大きくなる。ちなみにこれはまだ世に出回ってない試作品。少しばかり耐久には難があるけれど、性能はどの外錬装具をも凌駕している。性質は名前の通り氷」
「なるほど。強そうだなそれ」
「ええ。でもこれを持ってしても、カグラには遠く及ばない。2つの装具を1つに合わせる必要がある」
「ああ。わかっている」
俺達は互いの刀を交差させ、目を閉じて心に集中した。
すると脳に直接話しかけられるような感覚で、リリアの声が聞こえてきた。
(……光助、聞こえる?)
―――これが念話というやつか。感覚でしかできないので伝わるか不安だが、俺もリリアに続いて言葉を送る。
(聞こえるよ。要件をどうぞ)
(落ち着いて聞いて。フレイムベルとアイスベルは違う性質を持っているけど、元の動力は私の心核によるもの。交わらないはずがないの。2つの力を合わせればカグラにも匹敵する力を発揮できる)
(だけど俺を助けた為にリリアは具象装具を失った。その力を発動させるには俺の協力が必要になる。タイミングを上手く合わせる必要もある)
(ええ。心を通わせるのは心核を共有する私達にしかできない手法。これによりタイミングを計る事は容易になる。後は力を混めて強く振りきるだけ)
(ああ。心核のキズナで結ばれる俺達なら絶対できる)
「心核のキズナで繋がってるって……よくこんな状況でそんなくさい台詞思い付いたわね。まぁ悪い気はしないから、別に構わないのだけど」
念話でのやり取りは問題なくできた。まるでエスパーだな俺達―――などと思っていると、リリアは笑みを浮かべながら、直接話しかけてきた。
俺はふて腐れた顔でリリアの心に訴えかける。
(構わないのなら掘り返すな。そう言われると、後になって恥ずかしくなる)
(いいじゃない別に。私はただ悪い気はしないと、伝えたかっただけなのだから)
(嘘つけ)
(さぁどうかしら。それより、そろそろ始めましょうか?)
(……ああ、そうだな)
俺達は互いの刀を重ね合わせ続ける。心で対話し呼吸と鼓動を合わせ、鋭い眼光でカグラ・セイジを見つめた。
「……カグラ。悪いけど、加減しないから」
俺達は重なる刀を振りかざした。赤と青の光を帯びた剣撃は十字を描き、カグラ・セイジの元へ放たれた。 大地をえぐり、空気を激しく振動させる。
「ユニゾンスキル―――その存在を忘れていた。お前が得意とする戦法の1つだったな。それを2人でやってのけるとは大したものだ」
「そんな……嘘だろ!?」
斬撃を放った瞬間、タイミングが上手く合った事を確信した。普段放つ炎よりも強力で、以前リリアが百の地底獣を葬ってみせたものと同等か、それ以上の威力があるように感じとれた。
十字の斬撃は圧巻的だった。悪党でもないのにやり過ぎたんじゃないかと、敵対する彼の心配して後悔もした。
しかし心配など全く無用だったようだ。カグラ・セイジは俺達が放った斬撃を一振りで切り裂いた。斬撃はより強大な力によって消失した。
カグラ・セイジは何事もなかったような様子で、周囲に出た被害を確認しながら、俺達の元へ歩み寄ってきた。
「結界が壊れる事を想定してなかっただろう? 俺が避けていたら、どう責任をとるつもりだった? 物損の修繕だけでは済まされなかったぞ」
いやいや、俺はあんたの強さが想定外なんですけど?
産まれて初めて、どう足掻いても越えられない壁が立ちはだかった。圧倒的すぎる存在の前に、俺達はなす術が無くなりその場に立ち尽くした。反撃してやろうなんて気にもなれない。
「化け物かよ」
「ダメだった……どうやらここまでのようね」
「くそ。あの人の狙いは俺だ。俺さえいなくなれば納得するはず。だったら―――」
「待って光助、私はあなたと共に生きる事を決めている。あなたが死ぬなら私も―――」
「ばかやろう! 無駄死になんて考えるな! お前は生きろ!」
「嫌! 光助が死ぬなら私も死ぬ! 自分の命や父の権力、なんだって掛け合いに出してカグラを説得してやる!」
窮地に追いやられた俺達は互いの意見を主張し、自身が考える最善の策を押し付けようとした。
俺は自分を犠牲にしてリリアを救おうとし、リリアは自分も死ぬ覚悟でカグラ・セイジを説得しようとした。
そんな口論をする俺達の元に、カグラ・セイジは呆れた顔でやってきた。
「……なにいちゃついているんだ。馬鹿どもが」
カグラ・セイジは刃先を俺の目の前に向け突き立てていた。俺は唖然とした表情でその姿をしばらく見つめた。
「……何をしている? 早く受けとれ」
「っていでぇ!」
カグラ・セイジは刃先を俺の頬に当ててきた。マジで刺してきやがったよこの人。最強の具象装具を雑に扱うな。
恐る恐る刃先を見てみると、そこには指輪がぶら下がっていた。
「……え? 何これ?」
「合格だ。これは騎士として認められた者に与える指輪だ」
「騎士として認める?」
「ああ。これは特例の選考試験。俺は団長の指示により、貴様がクロスニクスのペアとなりうる存在か確認しにきた」




