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心核のキズナ  作者: 水鳥潤
変わる日常
22/73

地底人との接触




 目的地に着き、俺達は地上に足をつけた。しばらくの間使用していなかった俺の足は、宙に浮きそうなくらい軽くなっている。


 「……気持ち悪い。死ぬかと思った」


 気分を悪くし塞ぎ混んでいると、リリアは俺を擁護するように前に立った。


 「光助、下がっていて。そこに地底人がいる」


 「……おう」


 俺達がやって来た場所は港付近の倉庫。人気はなく潮風と波音だけがこだましている。


 「隠れても無駄よ。早く出てきなさい」


 リリアの声を聞き観念したのか、倉庫から1人の人物が現れた。




 ――その人物は俺の知る人だった。



 「破馬、こんな時間に外へ出歩いて。やはりお前は不良だな」


 「……阿久津先生? どうしてここにいるんですか?」


 俺達の前に現れたのは、数学を受け持つ阿久津先生だった。


 「お前ら兄妹は揃って出来損ないだ。髪を染めてるし。身だしなみがなってない」


 阿久津先生は普段に増して口悪くし、俺をけなした。俺の問いには聞き耳も持ってはくれない。


 「その台詞、職員室でも言ってくれたわね。あなたこそ教師としてなっていないんじゃない? メガネを外して正体を現しなさい」


 「……そうか。バレていては仕方ない。秘密を知ったからには、お前ら2人揃って地獄行きだ」


 リリアと口論の末、阿久津先生はふっきれた様子で黒縁の眼鏡を外した。


 赤く鋭い瞳が露になる。その瞳で俺達を睨みつけ、足音をたてながら歩み寄ってくる。



 「地底人……阿久津先生が?」


 「ね、地上にもいたでしょ? この男のように、地底人は案外身近な場所にいる」


 「破馬、生きては帰さないからな」


 「……光助」


 「……ああ、わかってるよ」


 俺は小さく頷き、リリアの背後に回る。

 リリアは何もない場所から剣を取りだし、それを左手に構えた。以前見た物とは違い、銀色を基調とした西洋の剣だ。



 「———死ぬのはあなたのほうよ阿久津」



 悠長に相手の出方を伺う事なく、リリアは突進して阿久津先生に切りかかった。

 阿久津先生は鋭く大きな爪で応戦する。


 「くそ!」


 「遅い」


 リリアは常人の目では追えない速度で動き、阿久津先生の四肢を切り落とした。

 追い討ちをかけるように、脳天に目掛けて剣先を突きつける。


 「ぐぅ……強いな。だがこれで勝ったと思うなよ」


 手足を失い、重力に逆らわず落ちてゆく胴体と頭。目をそむけたくなるくらいに痛々しい姿。

 にも関わらず、阿久津先生から死を受け入れた様子は感じられない。口元も大きく緩ませている。


 リリアは何かを関知し、止めを刺す前に剣を引き、大きく後退した。


 ———その直後、阿久津先生の切り落とされた胴体から新しい手足が生えてきた。



 「なんだ? どうなってるんだ!?」


 「地底人も天界人と似た特性を持っている。生命を司る核が消滅しない限り死なない。そして今再生したのはあいつの能力。天界人は心核の力を装具として具現化させ、地底人は己の身体を変貌させる」


 「リリア? 阿久津先生の様子がおかしいぞ」


 阿久津先生は超速度で切られた個所を再構築させ、背中からは無数の手を生やした。俺の見間違えでなければ、体積は3倍くらいに膨れ上がっている。


 「まじかよ。人と言うより、化物じゃないか!?」


 「これだから地底人は下劣で困る。早く消えてくれないかしら、目障りだから」






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