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心核のキズナ  作者: 水鳥潤
変わる日常
15/73

2度目の初絡み




 会話を終えて気分よく歩いていると、リリア俺の袖を掴み、歩く足を止めてきた。


 隣に顔を向けると、彼女は俺とは別の方向に視線を向けている。



 「……おい、どうしたんだよ?」


 「地上のコンビニって、ある程度の物は揃っているのよね? 靴下とかシャツとか」


 「ああ。衣類関連も、俺の働く店には置いてあるよ。ちょうどリリアが視線を向ける店だ」


 「そう。実は私‘パンツ’をはいていなくて。買いたいので付き合ってくれるかしら?」



 何かあれば言えといったが、最初のお願いがパンツ買いたいですか。



 て か 、 今 ノ ー パ ン な の か よ !


 何 考 え て い る ん だ こ い つ ! ? 




 「すぐに買ってきなさい!! 俺は外で待っているから!!」


 俺はリリアに1000円札を2枚握らせ、1人で買いに行かせた。



 リリアは落ち着いた様子で店内に入った。


 目的の物はちゃんと買えるのだろうか? 方向音痴といい、リリアは妙なところが抜けているからな。


 店の人に女子といるところを見られたくないし、ましてや一緒にパンツは買えない。俺はそわそわした様子で腕を組み、リリアが店から出てくるのを待つ。





 「——破馬君だよね?」



 すると俺は誰かに声をかけられた。


 声のする方へ顔を向けると、側に黒髪の女性がいる事に気がつく。



 「お、おはようございます」



 声をかけてきたのは桐島玲奈だった。耳元の髪をかき上げながら、俺の側に立ち話しかけてきた。



 「あ……その……」



 桐島の突然の登場に、俺は驚きを隠せなかった。頭の中では話したい事は山ほどあるのに、それを口にできない。


 「ごめんなさい、同じクラスの桐島玲奈です」


 うろたえていると、桐島は頭を下げ、律儀に名前をフルネームで名乗ってきた。



 「なぜ自己紹介する。知っているよ!」


 慌てて突っ込みを入れると、


 「そうなの? よかった、初めて話しかけたから不安だったんだ」


 桐島は頭を上げて、安心した表情を浮かべた。


 (あ、やべ、目の前に天使がいるわ)



 彼女の笑顔に癒しを感じながら、


 「……なぁ桐島、2日前の事覚えているか?」


 俺は気がかりだった事を尋ねてみた。



 「2日前? その日は学校行く途中に気を失って病院に搬送されたらしいよ」


 「もう平気なのか?」


 「うん、平気だよ。昨日もゆっくり家で休んでいたし」


 

 桐島は2日前の出来事を覚えていなかった。実際にあった記憶をすり替えられている様子だ。さすがは天界人、やる事が地上の常識から逸脱している。


 「そっか。それはよかった。心配したよ」


 それでも桐島は2日前と同様、俺に声をかけてくれた。それがたまらなく嬉しくて、俺は浮かれてしまった。



 

 一 緒 に い た 女 子 の 存 在 を 完 全 に 忘 れ て … …




 

 「光助、パンツ買って来たわよ。ブラジャーは売ってなかったのは残念だわ。しばらく我慢するしかないか。あ、でもパンツはちゃんと買ったから。家に戻ったらはくからね」



 リリアはパンツの入る袋を持って、俺達の前に颯爽と現われた。



 この子、なんて問題発言してくれる? 


 てか、ブラもつけてなかったのかよ! 白のTシャツとか渡していたら、透けて見えていたのかよ? ぽろりもあったな!



 「は、破馬君!? こ、この子は誰なの!?」


 桐島は俺を軽蔑するように、小刻みに体を震わせながら質問をしてきた。


 桐島だけには誤解されたくない。そう思った俺は小さい脳をフルに使って、どうすればこの状況から脱出できるか模索した。


 「こ、この人は別に怪しい人じゃないよ!」


 焦りがかなり生じていた。単純な言葉しか口にできなかった。


 するとリリアは何を思ったのか、


 「そうです、私はあなたの命の恩人です」


 俺と桐島の会話に割って入ってきた。


 「は!?」


 俺は声を半音あげて驚いた。

 すると桐島は首を傾け、リリアに質問を投げかける。


 「……恩人ですか。すみません、私達どこかでお会いしましたか?」


 「ええ、この世界の下の地底……」


 「そ、それじゃ、また後で!」


 収集がつきそうもない混沌の状況。

 耐えられなくなった俺はリリアの手を引き、この場から走り去った。



 道中、リリアは無関係面で焦る俺に話しかけてくる。


 「よかったわね。彼女あなたの事悪くは思っていないみたい。女子って、どうでもいい相手にわざわざ自分から声をかけたりしないもの」


 「そりゃどうも! だが何故いらん事言う? せっかく桐島こないだの事忘れていたのに」


 「確認の為よ。それにあなたの焦る顔が見たかったから」



 「本 当 性 格 悪 い な !」 



 桐島が無事でよかったが、妙な場面を目撃された。あの状況を察するに、桐島は妙な誤解を抱いた可能性が高い。


 一緒にいた少女は男物の寝巻を着ていて、しかもコンビニで下着を買ってきただと? もう完全に俺とリリアが恋仲みたいに見えるじゃないか!?



 再度訪れた桐島との絡みは思いもよらない結果に終わった。

 俺は走る足を休めることなく、自宅へと帰還した。



 

 



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