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心核のキズナ  作者: 水鳥潤
リリアとの出会い
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平凡な日常

初投稿です。誤字脱字など読み苦しい点が多々あると思いますが、よろしくお願いします。

不定期に文章の修正する場合もございます。内容を改変するレベルではないですが、ご了承ください。



 窓越しに映る木から華やかさが無くなった。


 2年に進学してからずっと眺めてたが、ここ数日の変わり様は特に凄い。

 咲き始めは「今か今か」と待ち焦がれても散る時は一瞬。桜の見頃はあっという間だ。今じゃ他の木と見分けるのも困難に思う。


 (……月日が経つのは早いが、この時間はやたら遅い)


 授業中、俺はふと黒板上の時計に目を向ける。



 ——我がクラス、2年A組では数学の授業が行われていた。昼食後という事もあり、多くの生徒は俺と同様、気の抜けた顔をしている。携帯をいじる人もいれば、前の席で堂々と顔を伏せる奴もいる。


 眠る気持ちはわかる。張りのない声で数式を語られると「睡魔を生む呪文か?」と思うほどだ。阿久津(あくつ)先生の授業を真面目に聞く生徒なんて、このクラスでは桐島しかいないだろう。



 桐島玲奈きりしまれな。学年主席の成績優秀者。バスケ部に所属しており、人当たりの良い性格で友好関係は広い。学校にいる時は決まって誰かと一緒にいる。

 黒髪美少女と言えば清楚な印象を持つだろう? 加えて勉学・体力・コミュ力の三拍子が備わるってんだ。彩色兼備という言葉が相応しい女子だ。


 桐島より可愛い人なんて見た事ない。何かの手違いでいいから話しかけられたい。そんな思いを抱く程に、俺は彼女に好意を寄せていた。

 これを「恋」と呼ぶのか定かでないが、自分にない物を多く持つ彼女に対し、憧れを持っているのは確かだ。


 (相も変わらず、いつ見ても輝いてんだよな……)


 嬉しい事に、桐島と俺の座席は近かったりする。顔を右に向けると、隣にいる桐島が視界に入った。窓から注ぐ風で髪がさらりとなびく。艶やかで綺麗な黒髪だ。誰かさんとは大違いだ。

 俺は癖のある前髪を触りながら、ついつい彼女を横目で追い続けた。



 「——では破馬、次の問題を解答しなさい」



 そんな俺を阿久津先生は前触れもなく名指した。


 次ってどこだ? 慌てて問題集を広げるも、問題がどれかわからない。ま、どれかを確認できたところで答える自信なんてないが。


 「……すみません、わかりません」


 諦めの返答をすると、阿久津先生は呆れて深いため息をつく。


 「まったく、こんな問題もわからんのか? では桐島、君が代わりに答えたまえ」


 「は、はい……」


 隣にいる桐島は俺を気遣うように、控えめな口調で解答を始めた。


 「―――です」


 聞きなれぬ数字が述べられた。阿久津先生はにやりと満足そうな顔をした。うん、これはきっと正解だ。


 「うむ、桐島は優秀だな。それに比べて破馬は人の話を真面目に聞かん。生活態度がなっていない証拠だ。いい加減その茶色い髪を黒に戻してきてはどうだ? お前は彼女を見習え」



 ……この人、阿久津先生は以前から俺に対する当りが強かったりする。

 俺を叱る前に目の前の奴を注意すればどうですか? 色素の薄い髪を地毛だと言い張る事が、そんなに気に食わないのか?


 そう内心で思いつつ、俺は不満をぐっと堪えた。


 「すみません、以後気をつけます」


 阿久津先生はどんな正論をぶつけられても、自分の考えを絶対に曲げない。これでも先生とは1年の付き合いだ。処世術的なものは心得ている。

 真っ向から相手にしない方がいいので、俺は反省しているとだけ伝えた。


 「ふん、わかったなら態度で示せ」


 これにて生活指導には発展せず、事なきを得た。


 ナイスなタイミングで授業終了のチャイムが鳴り、先生は足早に教室を後にするのであった。





 ――—休み時間になると、先程の口論を心配した友人らが俺の元に集まってきた。


 「阿久津の授業疲れるわ。大丈夫かハマコー?」


 「問題ないよ。俺を叱る前にマサを叱れと思ったけど」


 「え、俺を?」


 「だよな、俺も阿久津は差別していると思うよ。マサは気に入られてっから」



 マサというのは教壇前で寝ていた張本人だ。誰に対しても分け隔てなく接する奴で、俺にとっては1番気の許せる友人。


 他の2人は2年になり、マサを通じ仲良くなった梅津と竹田。2人はサッカー部に所属しており、ノリの良い性格をしている。


 マサ、梅津、竹田。この3人は良くも悪くも、クラスのムードを引っ張る存在だ。落ち着きのある生徒が多くいる教室内では、彼らの声はよく響く。



 「俺が阿久津先生に気に入られているねぇ。野球部で髪が坊主な事くらいしか検討つかないわ。ハマコーも野球部に入って坊主にすれば? そしたらその散々注意を受けてきた髪ともオサラバできるぞ」


 「あいにく俺の髪は色も質も天然でね。わざわざ黒にしたり部活に入る気もないよ。坊主なんて、似合わないの分かりきってるし」


 「つれないなぁ。まぁ気が向いたら入部しろよ? ハマコーって運動神経だけは良いし」


 運動神経の良さを褒められても、‘だけ‘を強調されたので素直に喜べない。

 まぁ実際その通りだけどさ。毎度試験終わり、補習を複数受講してるからな。俺より居眠り常習犯のマサの方が賢いだなんて、皮肉な現実だよ。



 「おーい、みんな席につけよ」



 雑談していると、6時間目の授業を受け持つ先生がやってきた。それと同時にチャイムが鳴り響く。


 「それじゃあなハマコー」



 3人は自分の席に戻り、次の授業は開始される。


 本日最後となる授業は古典。クラスの担任でもある(たいら)先生の授業はスピーディ、かつ充実ある内容で進行される。

 この時は外を眺めたり、桐島にみとれる事はなかった。集中していると時間の経過が早く感じる。5時間目とは大違いだ。


 これで平先生より、阿久津先生の方が給料貰ってるんだよな? 小じわや白髪の多さを見る限り、阿久津先生の方が年上だし。

生徒達にとっては平先生の授業の方が有益なのに、おかしな話だ。


 年功序列に歯向かう思考が過る……その直後に終わりを知らせるチャイムが鳴った。

 もう終わり!? 俺は聞き洩らした箇所を慌ててノートに書き込んだ。



 「今日はここまで。みんな気をつけて帰れよ。部活のある者はもうひと気張りな!」



 平先生が教室を後にすると、多くの生徒は部活カバンを背負い、教室から出ていく。

 俺は彼らを見送るように、ゆっくりと身支度を始めた。教科書類をスクールバックに詰め、1人で教室を後にする。

 放課後になっても賑やかな校内。人の群れを横切りながら、俺は学校の外に出た。






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