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潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第5章 ~僕、夏になったら海水浴にいくんだ……~
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僕、夏になったら海水浴に行くんだ…… 5

 海岸清掃ボランティア当日である。

 高校生が総出で澪の海辺を掃除している。

 もちろん形だけのおざなりなゴミ拾いなど、巫陣営は許さない。

 掃いたように綺麗に、とは、今回のスローガンである。

「ここだ。ここを海水浴場にする」

 麦わら帽子をかぶった実剛が指さす。

 指のさきに見えるのは尖塔。

 その昔、明治天皇が臨御したのを記念して建てられたものらしい。

 かつてはここに小舟が着けられる桟橋があったという。

「良いロケーションですね。実剛君」

 信二がいった。

 駅からもよく見える場所。

 ここに無数のビーチパラソルが立てば、降り立った者の期待はいやが上にも高まる。

「アクセスも良いですしね」

「ですね。明日にでも絵図面を起こしますよ」

 魚顔軍師の脳裏にはこのあたり一帯の開発計画が描かれている。あとはそれを形にするだけだ。

 清掃作業は順調に続いている。

 地上部分だけでなく、海中もダイバーを動員して完璧に掃除する。

 放置された漁具をすべて撤去し、客の危険を極限まで減らす。その後、輸送してきた砂を敷き詰めるのだ。

 あざといような気もするが、せっかく訪れた海水浴場がごつごつの岩場だったら、客はがっかりしてしまう。

 突き抜ける蒼穹とどこまでも続く白い砂浜。

 色とりどりのビーチパラソル。

 陽気な音楽。

 軽食を売る海の家。

 これらが揃ってこその海水浴場だ。

「この記念碑を起点にして両側一キロずつ。これを海水浴場として設定しましょう」

「ホントは全部やってしまいたいですけどね」

 軍師の計画に苦笑を浮かべる実剛。

 無理な相談である。

 海岸線すべてを再開発してしまえば、漁業者の生活が立ちゆかなくなる。

 観光と漁業。

 上手く両立させなくてはいけない。

「今のところは、ですけどね」

 信二の計画はかなり大胆だ。将来的には漁業も水産加工業も捨ててしまおうと考えているのだ。

 もちろん、五年や六年のスパンではないが。

「それにしても派手な掃除ですねー」

 寄ってきた絵梨佳が、笑いながら言う。

 どーんどーんと、花火のような音が響き、あちこちで砂が舞い上がっている。

 量産型能力者たちが、念動力(PK)で表層を持ち上げているのだ。埋まっているゴミも撤去するために。

 かなりの徹底ぶりだが、何十年にも渡って放置されてきたゴミも多い。表面だけ取り繕うだけでは、なかなか綺麗にはならないのである。

「苦労をかけるけど、必要な事だからね」

 量産型能力者が掘り起こしてくれたゴミを、袋に回収しながら実剛が答えた。

 でるわでるわ。

 掃除開始から三十分も経っていないのに、実剛はゴミ袋を二度交換している。

「能力の訓練にもなるから丁度良いの」

 野暮ったいジャージに身を包んだ奈月が笑う。

 まったく似合っていない。中身が良すぎるため。

 もともとスタイルは悪くない女教師だが、霊薬の効果でモデルも真っ青なくらいの完璧ボディに昇華していた。

「お疲れ様です。佐藤先生」

 頭を下げる実剛。

 彼女と量産型能力者女性陣の働きは特筆に値するもので、今日のボランティア以外にも、町内や校舎周りの清掃を買って出てくれている。

 見目麗しい十五人のお掃除隊。

 すこしずつだが話題になりつつあるようだ。

 ちなみに男性陣は、光則と佐緒里に率いられ、普段は道路脇の雑草処理に従事している。

 毎年、毒蛾が発生する厄介もので、こんなものがあっては観光客の出足にも影響してしまうからだ。

 ついでにマムシなどの毒蛇もできるだけ駆除しておきたい。

 今年は海だが、来年以降は川も観光スポットとして売り出す予定なのだから。

「むしろまったく疲れないわね。いまさらながら、あなた達が羨ましくなるわ」

「僕はふつうに疲れますけどね? まだ能力が発現してないんで」

 苦笑。

 量産型能力者は、今の実剛よりはるかに強い。

 反旗を翻すならチャンスであろう。

 もちろん、実剛を打倒したらその次には特殊能力者たちとの戦いが待っているわけではあるが。

「私は、巫くんが間違ったときのために力を得たの。間違わない限りは味方よ。絶対にね」

「先生に見限られないためにも、頑張らないといけませんね」

 わずかに頬を染める実剛。

 十六歳。年上の女性(ひと)に憧れる年代である。

 本人に言ったらムキになって否定するだろうけれど。

「はいはいっ そこっ 離れて離れてっ」

 男女の間に絵梨佳が割り込んでくる。

 むぅ、とほっぺたをふくらませて。

「いけない。可愛い婚約者さんがやきもちを妬いているわ。先生はこのへんで退散します」

 陽気に笑う佐藤教諭。

 清掃作業へと戻ってゆく。

「実剛さんは佐藤先生にでれでれしすぎですっ」

「そんなことないよー」

 苦笑しながら、少年が少女の髪を撫でる。

 彼がこういうことをするのは、絵梨佳と美鶴に対してだけだ。

 たしかに特別扱いはしているのだが、妹扱いといえなくもない。

「なんか子供あつかいされてる気がしますっ」

「そおかなぁ?」

「わたしだってオンナなんですよ。婚約者が他の女性と仲良くしてたら嫉妬くらいします」

 少しだけ悲しげな顔。

 どきりとする。

 だが、言われてみればその通りだ。

 けっして絵梨佳をないがしろにしたつもりはないが、彼女の優しさに甘えていたのも事実である。

「ごめんね。絵梨佳ちゃん。どう償えば許してくれるかな?」

 真摯に頭を下げる。

 自分が悪いと思えばきちんと謝罪する。

 得難い資質だ。

 花が咲くように少女が笑う。

「わたしも大人げなかったです。だから、デート一回で手を打ちますよ」

「それはありがたい。じつは食べておきたい生パスタの店があるんだよね」

「わたしは新しい水着が欲しいです」

「じゃあ決まり。週末に函館にいこう」

「はいっ」

 いちゃついてやがる。

「お前ら仕事しろっ ついでに爆発しろっ 砂嵐(サンドストーム)!!」

 光則の声とともに砂が吹き付けてくる。

 もちろん手加減したもので殺傷力はなく、ただ砂まみれになるだけだ。

 砂浜こそ、彼のフィールドである。

「うひゃあ!?」

「みっつが嫉妬の鬼になったぁ!」

 ほうほうの体で逃げ出す実剛と絵梨佳。

 平和なことであった。

 海岸掃除はちゃくちゃくと進んでいる。

 ゴミや漂着物は、ある程度はオブジェとして飾る予定だ。

 とはいえ、海水の汚さだけは掃除ではどうにもならない。

「今夜か」

 ぽつりと佐緒里が呟く。

「どうした?」

 気づいた光則が声をかけた。

「当主のチカラ。初めて見ることになるから、とても興味深い」

「言われてみれば、俺も暁貴さんのチカラはよく知らないな」

 目を細める砂使いだった。



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