表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第5章 ~僕、夏になったら海水浴にいくんだ……~
40/338

僕、夏になったら海水浴にいくんだ…… 1

 激動の六月が終わり、七月に入った。

 気象庁は梅雨明けを宣言してくれなかったが、そもそも北海道に梅雨はない。

 この一事だけでも、本州人からみると異世界と変わらないという例証になろうか。

「あと、Gがいないこととかね」

「G……? ああゴキブリね。見たことはないわよ」

 朝食の支度をしながら、将来の義妹の言葉に反応する絵梨佳。

 北海道にはゴキブリがいない。

 これは正確ではない。

 ホテルや飲食店など、比較的いつも暖かい場所には出没するらしい。

 もちろん、出会わない方が良い生物なので、べつに絵梨佳は残念に思ったりしていなかった。

「もし見ちゃったら、恐怖のあまり能力を全解放しちゃう自信があるわ」

 物騒なことを言う。

「絵梨佳姉さんの能力って、結局なんなの?」

 ふと心づいて美鶴が訊ねた。

 最強の戦士と呼ばれているが、じつのところ絵梨佳の能力について、彼女はよく知らない。

 体調不良なのに萩鉄心と引き分けたとか。

 高校の校舎の壁を屋上まで駆け上がったとか。

 話で聞いているだけだ。

「芝絵梨佳の力か。エリカ・エクスクラメイションといってな。ビッグバンと同等のエネルギーを放出する」

 横から話に首を突っ込む佐緒里。

「それ地球消滅するから。元ネタなによ? 佐緒里姉さん」

 最近、美鶴は鬼姫も姉と呼称するようになっていた。

 馴染んだというより、この際どっちが兄嫁になっても良いと考えているようである。

 兄が妹の恋愛事情に無関心である以上に、妹も兄の将来の伴侶に無関心らしい。

「だが、萩に同じ技は二度通じない」

「その言い方だと、一回は使ってることになっちゃうよ。いつ地球滅びたのよ?」

 そもそも滅びていたら皆この場にいないだろう。

「何から突っ込んで良いかわかんなくなるけどね。重力制御よ。基本的には」

 やれやれと肩をすくめる絵梨佳。

 ようするに寒河江と同じチカラだ。

「重力制御もそのひとつ、というべきだな。芝絵梨佳」

 佐緒里が苦笑した。

 つまり他にも能力があるということである。

「まあそのへんはおいおいね。あんまりペラペラ喋るもんじゃないから」

 乙女のたしなみ、と義妹の頭を小突く。

 くすぐったそうに目を細める美鶴。

 と、チャイムが鳴る。

 光だろう。

 しばらく前から、彼も食事をともにするようになっていた。

 具体的には仙台から戻ってからである。

 寝るとき以外は一緒にいる、という表現に近い。

 ぱたぱたと、美鶴がダイニングを出てゆく。

 見送った絵梨佳と佐緒里が顔を見合わせて微笑する。

 仲が良くて結構なことだ。

「ところで、噂を知っているか? 芝絵梨佳」

「知ってる噂もあれば知らない噂もあるけど。わざわざ声を潜めるような話なの? 佐緒里さん」

「うむ……羽原光と巫美鶴が、もう一線を越えているというものだ」

「マジでっ!?」

「噂だ」

「まずいじゃんっ 先こされちゃってるじゃんっ」

「うむ。そこで、だ。芝絵梨佳」

 ぐっと顔を近づける。

「しま○らの下着では駄目だとおもわないか?」

「じゃあどこで買うのよ? 湯の川生協のサ○キ?」

「唐変木にセクシーランジェリーは通用しない」

「朴念仁だもんねぇ。いっそ全裸で」

「是非もない」

 ボケばっかりで話が進まない。

 ともあれ、義妹候補が経験済みという可能性がある以上、彼女たちもうかうかしてはいられないのだ。

「この夏が勝負だな」

「ていうか佐緒里さんって実剛さん狙ってないよね? べつに」

「あたしの狙いは坂本光則だ。だがあいつは巫実剛のつけあわせ(バーター)

「ひっどっ 抱き合わせ商品扱いっ!?」

 女子トークで盛り上がっていうるうちに、そろそろ良い時間になってきた。

 手早く弁当を仕上げてゆく絵梨佳と佐緒里。

 自分たちの分と、暁貴、実剛、そして光の分だ。

 光は給食がある中学校に通ってくるくせに、さらに食べるのである。

 べつに放っておいても良いのだが、飢えさせるのは可哀相だからと美鶴が主張するので、巫家では毎日五人分の弁当が作られている。

 それぞれの弁当袋に収納し終わると、見計らったように暁貴が顔を出す。

 口にはたばこ。

 ノーネクタイのワイシャツ。

 クールビズが始まったらしい。

「悪りぃ。今夜会議で遅くなるからメシいらねーわ」

「はい。おじさま」

「了解した。当主」

「んじゃいってくる。いつも旨い飯サンキュな」

 ごく簡単な会話を終え、弁当をもって出てゆく家主。

 いってらっしゃいと見送った二人も、居間に移動した。

 あらかたの者はもう朝食を食べ終えたらしい。

 実剛と光が片づけ始めていた。

「あ、ごちそうさま。佐緒里さん。絵梨佳ちゃん」

「うまかったぜっ 絵梨佳姉ちゃんっ 佐緒里姉ちゃんっ」

「お粗末様です。実剛さん。光くん」

「是非もない」

 いつもの挨拶。

 ぴろしきが、佐緒里の足元に擦り寄ってきた。

「当主は今夜は遅いらしい。あたしと寝るか。ぴろ」

 にゃあと返事をする。

 かつぶし奮発してくれるならね、と言っているようで、一同がくすりと笑った。

 ちなみに女性陣の朝食はすでに済んでいる。

 前は揃って食事していたのだが、やはり朝はバタバタしてしまうので、居間に用意した食事を勝手にとるというスタイルに落ち着いた。

 片づけを担当する男性陣が戻り、全員で学校へ向かう。

 ここ最近の日常風景であった。




「ところでさ。夏といえば、やっぱり海だよね」

 道すがら、実剛が口を開いた。

 澪は海の街である。

 だが海水浴場はない。

 ほぼ全域に渡って遊泳禁止だ。

 海水が汚いのと、放置してある漁具が危険なのが主な理由である。

 ついでに臭いも酷い。

 海の街として、これはいかがなものだろう。

「だからさ。今日、全校集会を開こうとおもうんだよ」

 唐突に言い出す。

「今度はなにを企んでるの? 兄さん」

 うろんげな顔で妹が訊ねる。

「ボランティア作戦。まずは海岸をきれいにして、泳げるだけの環境を確保しよう」

「学生たちを動員するってこと? そうまでして絵梨佳姉さんの水着が見たいの? とんだエロガッパね」

「あれっ!? 僕いい提案したよねっ!? 扱い悪くない!?」

「実剛さんの扱いはともかくとして」

 よしよしと、手を伸ばして婚約者の頭を撫でながら絵梨佳が続ける。

「ボランティアを大々的にやるのは、悪い事じゃないと思います」

「ああ。話題作りにもなるな」

 佐緒里も頷いた。

 問題は労働力だ。

 高校生程度が戦力になるだろうか。

「そこは、アンジー姉さんと光則の工作に期待大だよ」

 にやりと笑う、巫の次期当主だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ