撮影までの待ち合わせ 5
「遅くなってごめんなさい。」
「あっ、うん………ん?」
和希たちの中で一番遅く来た桂子に和希は振り返り、そして、その様子を見て固まる。
「どうしたの?」
「え~と、珍しい光景だと思って。」
「……そうね…。」
桂子は不本意というように顔を曇らせ、そして、彼女の後ろにいる二人の男を見る。
一人は瑛瑠の兄の千時。
そして、もう一人は和希たちの知らない青年だった。
「あっ、来てくれたんだな。」
「ああ。」
和希たちの知らない青年は空也の知り合いだったようで、彼は空也を見つけると何処か表情をやわらげた。
「礼、こいつらと来たのか?」
「いや、偶々そこであったんだ。」
「ふーん。」
「…おい、チビ。」
「……。」
「何ですか?西先生。」
「……。」
バチバチと火花を散らす千時と空也に和希たちは慣れているかのように無視をする。
「遅かったんやね。」
「ええ、少し手間取ってしまって。」
「あ~。」
「おじさん。」
「私たちが一緒って言っているのにね。」
「もう、本当に良い加減にして欲しいわ。」
和希たちは桂子の父が過保護だと知っているのに、呆れたような態度を取っているが、実の娘の桂子はどこか怒っているようだった。
「どうかしたの?」
「いえ、別に。」
「おい、いつまでぶー垂れてんだ。」
いつの間にか空也とのにらみ合いが終わったのか、千時が和希たちの所にやってくる。
「貴方が来るからですよ。」
「あ?それのお蔭で出られたんだろう。」
「ん?ちょい待って。」
瑛瑠は千時の言葉に首を捻る。
「何だよ。」
「ちぃ兄はお姉ちゃんに引き留められたよね。」
「ああ。」
「何で、その後に桂子ちゃんの所に行けんの?」
「そりゃ、あいつが桂子の家の前まで拉致ったから。」
「……。」
「……。」
「……お姉ちゃん。」
和希はどこか遠い目になっている。
紅葉はいつもと変わらない無表情。
瑛瑠は額に手を当てる。
「それは…。」
「お姉ちゃん…。」
「失策だったわ。」
項垂れる桂子に和希は気遣うように彼女を見る。
「あの人だったら助けてくれるとは思ったけど。」
「うん。」
「まさか。」
「うん。」
まさか、桂子の父親に千時を当てる何てと、和希はどこか遠い目をする。
「大丈夫だったの?」
「……あの阿呆の職種によってね。」
「……えっ?」
和希が予想していた言葉と違い、彼女は目を見開く。
「教師だったから、まあ、色々言いたかったみたいだけど、何とか言葉を飲み込んでくれたのよ。」
「そうだったんだ。」
「それにしても、あの阿呆に助けられたという汚点が残って本当に反吐が出そう。」
「……。」
桂子の物言いに和希は苦笑するしか出来なかった。




