攻略キャラとの出会い4
「ごめんなさい、貴重な時間を潰してしまって。」
「いや、僕は大丈夫だけど……あっちは大丈夫なのかな?」
詩音はちらりと冬牙を見る。
冬牙の頬は和希に抓られ赤くなっていた、それはもう痛々しい程に。
「大丈夫ですよ…ね?」
「……。」
ね、と言われ、冬牙はそっぽを向く。
「大丈夫ですので、自己紹介の続きをしましょう。」
「そ、そうだね…。」
「それじゃ、あたしから、南部桂子です、所属は帰宅部。」
「帰宅っていらんちゃう?」
「いいのよ。」
「うーん、まあええか、うちは西瑛瑠ちゅうや、よろしゅう。」
「ああ、よろしく。」
「で、こっちが。」
「東雲、紅葉。」
「東雲ってもしかして師匠の娘さん?」
「……。」
「あっ、やっぱり、その鼻先とか師匠に似ている、他は奥さんにそっくりだね。」
「あの……。」
紅葉の顔をじっと見て一人納得している詩音に和希は戸惑いながらも問いかける。
「紅葉ちゃんのお父さんのこと知っているんですか?」
「ああ、ごめん、ごめんね。」
「いえ。」
「師匠は僕の剣術の師匠で、僕が五つの時から教わっているんだ、それで、僕も時々君たちの学校で教えているんだ。」
「だから、今日いたんですね。」
「うん、まさかあんなにもいたなんて、取り逃がすなんて失態を犯してしまったよ。でも、もっとその可能性も考慮する必要もあったし。事前の調べが足らなかったか…。」
「それをいうなら、あたしたちも同じですよ。」
「南部さん?」
「この失態は次に生かせばいいんです。」
「次はない方がいいけどね。」
「当然です、ですが、あのような輩はごまんといますから。」
「……。」
苦笑いを浮かべる詩音に和希は同じように苦笑する。
「まあまあ、桂子ちゃん。」
「和希ちゃんは怒らないのっ!」
「……えっと。」
珍しく感情的になる彼女に和希は戸惑う。
「小学校の一年の時。」
「あっ。」
「小学校四年の時。」
「うん。」
「小学校五年の時。」
「う……ん。」
「小学校六年の時。」
「あはは。」
「中学校一年。」
「も、もう止めよう?」
「中学校二年。」
「うん、分かったから。」
「中学校三年。」
「だから、もう止めようね、桂子ちゃん。」
「高校一年。」
「えっ、ちょっと待って、私知らないっ!」
桂子の最後の発言に和希は目を白黒させる。
「ちょい、桂子ちゃん。」
「何かしら?」
「今月で何件目?」
「未遂含め十件よ。」
「ふーん、せやの。」
「潰す。」
「えっと、あの…うー……。」
いつもの紅葉の物騒な発言が出たが、今回の件は流石に犯罪でもあるので、何とも言えなくなる。
「あの私以外の被害は?」
「ないわ。」
「よかった。」
和希は心底ほっとしたが、その発言に四人は眉を吊り上げる。
「ちょっと待ち、和希ちゃん。」
「そうよ、その発言は可笑しいわ。」
「許す、駄目。」
「えっ、何で…私の盗撮とか、別に需要とかないでしょ?」
「……。」
「……。」
「……。」
和希の発言に三人は表情を強張らせる。
「和希ちゃん何きいとんの?」
「えっ?」
「和希ちゃん、だけ、被害。」
「ああ、うん、多分、間違えちゃったんだよね?」
「………。」
「………。」
「……………そんな。」
「訳ないっ!」
「ある訳ないやろっ!」
「訳ないでしょっ!」
「……。」
ものすごい勢いで否定する三人に和希は顔を引きつらせる。
「えー、でも。」
「和希ちゃんはめっちゃ!魅力的なんやよ。」
「油断、駄目。」
「そうよ、世の中どんな変態がいるのか分からないのよ。
そんなんだから、いつもいつも、盗撮されるのよ。
後、ストーカーとかもいたんだから。」
「……。」
桂子の口から出る言葉に和希は私じゃなく、瑛瑠ちゃんや紅葉ちゃん、桂子ちゃんの方じゃないのかな、と思っているが、もし、口にすれば三人からまたダメ出しが出ると分かっているのか口を噤んでいる。
「まあ、まあ。」
「外野、黙れ。」
「紅葉ちゃん、口悪いよ。」
「ははは、大丈夫だよ、僕の知り合いで死ねとかよく言う人いるけどそれより可愛いから。」
「……。」
詩音の言葉に和希、瑛瑠、桂子は不憫そうな目で彼を見るが、残りの二人は何の興味もなさそうな顔をしている。
「で、いつになったら帰れるんだ?」
冷めたような冬牙の声に和希はニッコリと笑う。
「日向さん?」
「何だ。」
「場の空気を読んでくださいね。」
「面倒だ。」
「……。」
徐々に笑みを深くする和希に周りの三人は後ずさり始める。
「やばいんちゃう?」
「マズイ。」
「今年初めてのマジ切れ?」
こそこそと話し出す三人に和希は笑みをそちらに向ける。
「――っ!」
「ひっ!」
「……。」
「三人ともシーしててね。」
唇に指を持っていけば三人は壊れた人形のように首を縦に振った。
「さて、日向さーー。」
「きゃあああああああああっ!冬牙様っ!」




