変わり者は変わり者を呼ぶ
「かずきちゃん。」
「あ、こんにちはこのはちゃん。」
「ん。」
後ろから声を掛けられ、「かずき」は笑みを浮かべる。
「きょう、じかんある?」
「きょう?」
「ん。」
「あいているけど……。」
「そう。」
「でもね……。」
「かずき」が言葉を紡ごうとするが、「このは」が彼女の腕を引いて言葉を紡がせてくれなかった。
「あ、あの…このは…ちゃん?」
「きて。」
「うん、あのさ、ほんとうに。」
「くる。」
「いや…ママにも…。」
「だいじょうぶ。」
「いやいやいや…。」
「かずき」は何とかして抵抗しようとするが、残念ながら「このは」の方が力強かった。
「はやくいこう。」
「おねがいだから、わたしのはなしをきいて~~~~~~~~~~っ!」
ズルズルと引っ張られる「かずき」は抵抗するもののそれは結局全て無意味なものだった。
そして、しばらく「かずき」にしたら見覚えのない道を歩かされ、そして、子どもの足でも十数分歩かされた。
「このはちゃん……。」
「もうすぐ。」
「かずき」は何度目にもなるやりとりに溜息を吐いた。
もしも、「かずき」が前世の記憶を持っていないただの少女だったらこの状況にどう感じたのだろうかと虚ろになりかける目で考える。
不安になって泣くだろうか?
それとも、この状況を楽しんでいただろうか?
まあ、どちらにしても、この後で待ち受けている母親の説教は間違いなく免れないだろうと彼女は腹を括るしかなかった。
「いた。」
「?」
「このは」の言葉に「かずき」はようやく前を見るとそこには自分たちと同じくらいの少女がいた。
「このはちゃーん。」
「かずきちゃん、つれてきた。」
「うわっ、めちゃかわいいね。」
「……。」
「かずき」は目の前の少女にまじまじと見られて、顔を引き疲らせる。
「はじめましてやね。」
「はじめまして……。」
「かずきちゃんやね?」
「うん。」
「このはちゃんからきいていとるよ。」
「そ、そう?」
目を輝かせる少女に「かずき」は引き始める。
「うんうん、ええね。」
「かずきちゃん、つよい。」
「うんうん、つよくて、かわいくて、そう、りそうのおとこのこやっ!」
「えっ?」
「かずき」は少女の言葉に顔を凍らせる。
「あ、あの……。」
「ああ、そういえば、じこしょうかいまだだったやね。」
「あ、ああ、うん。」
「うち、にし、えいるっていうねん。」
「かんざき、かずきです。」
「ほんま、ええわ。」
「えいるちゃん?あのね…わたし、おとこのこじゃないよ。」
「へ?」
キョトンとした顔は確かに可愛らしいのだが、その口から漏れる言葉はどれも彼女に衝撃を与えるので、正直に言えばずっと黙って欲しいと「かずき」は思った。
「わたし、おんなのこだよ。」
「ええええええええっ!」
驚く「えいる」に「かずき」は肩を落とした。そして、それを見ていた「このは」は話が分かっていないのか首を傾げている。