果し合い?
和希は幼馴染たちの目をかいくぐり体育館の裏までやって来た。
しかし、そこには誰もいなかった。
「早く来たのかな?」
和希は溜息を吐き、そして、鞄から小説を取り出す。
パサリ、パサリと乾いた音が響き渡る中、最後の一ページを読み切った和希は本を閉じた。
「まだ、来ないのかしら?」
早く来てくれないと晩御飯をあり合わせのもので作らないといけないだろう。
「何があったかな、人参……ジャガイモ……玉ねぎ……ああ、そう言えば、魚もあったな。」
焼き魚と肉じゃがでもいいなと考えていると、ようやく砂利の踏む音が聞こえた。
「あら、怖気づいて来ないかと思った。」
「……。」
和希は苦笑をして、来た少女を見た。
「ねぇ、あんたさ、冬牙様を知っているわよね。」
「……。」
疑問ではなく言い切る彼女に和希の頭の中で何かが切れそうになる。
「会わせなさいよ。」
上から言う彼女にとうとう和希は切れた。
「ねぇ、貴女。」
「何よ。」
「貴女は何様なの?」
「はぁ?」
「自分が物語の主人公とでも思っているの?」
「そうよ。」
あまりにも痛い回答に和希は痛ましい目で彼女を見る。
「何よその眼は。」
「いえ。」
睨む彼女から逃れるように和希は視線を逸らす。
「いつまでも自分が特別だと思うのは子ども過ぎないかしら、ここは現実よ。」
「何が言いたいのよ、モブの癖に。」
「モブだとしても、私はちゃんとここで生きている。ちゃんと考えて動いている。」
「ふん。」
「……。」
和希はどうにかして彼女と分かり合えないかと考えていたが、流石にここまでだとは思っていなかったので、本当に参っていた。
「私がもし本当に冬牙さんと呼ばれる人を知っていたとしても今の貴女には教える気はないわ。」
「何ですって。」
「今の貴女はその冬牙さんをまるでゲームのキャラクター、もしくは虚像として見ているわ。」
「それがなんなの。」
「……やっぱり、駄目ね。」
「何がよ、言いたい事は言いなさいよっ!」
「ここは現実よ。」
「分かっているわ。」
「現実だったら分かるでしょ、一人ひとり、それぞれの意思がある、それなのに、貴女はそれを無視している事をしているわ。」
「そんな事ないわ。」
「あるわ。」
「……本当に邪魔な存在ね。」
爪を噛む彼女に和希は溜息を零す。
「ゲームと違ってリセットも効かない現実に生きているのよ、何でもかんでも貴女の思い通りになるはずがないのよ。」
「モブが何を言っているのかしらね。」
「……。」
和希は溜息を吐く。
「話し合いで分かり合えればと思ったんですけど、無理なようですね。」
少しでも彼女が自分の言葉に耳を傾ける人ならばと和希は一対一で臨んだのだが、残念ながら彼女はそんな和希の思惑も分かろうとせず、彼女の言葉を蹴った。
「ならば、一つ言わせてください。」
「何をかしら。」
「私は貴方と対立するつもりも、協力するつもりもありません。」
「……。」
「だけど、貴女が私の大切な人たちに危害を与えるというのなら、私は容赦いたしません。」
「モブなのに何ができるというの。」
「何にもできないかもしれません、でも、何か出来るかもしれません。」
「何が言いたい訳?」
「私は私の意思を貫きます、だから、貴女が私の逆鱗に触れない事を切に願っています。」
和希は最後に殺気を放ち、そのままその場を立ち去った。
和希は本気で願っていた、余計な争いが起こらない事をーー。




