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前世の俺は攻略キャラだったらしい  作者: 弥生 桜香


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女子会8

「本当に私には好きな人がいないんだってば。」

「……。」

「……。」

「……。」

「……。」


 黙り込んでいる四人に和希は困惑する。


「だって、私こんなんだし、平凡な人よりも、紅葉ちゃんのような美人さんや桂子ちゃんのような知的な人とか瑛瑠ちゃんみたいに社交的な人がいいじゃない。」

「和希ちゃん。」

「それ。」

「間違っとるよ。」


 三人が区切って何故か、和希の言葉を否定する。


「何処がよ。」


 和希は唇を尖らせる。


「まず、和希ちゃんは平凡じゃないわ。」

「可愛い。」

「ちょい美人。」

「成績もいいしね。」

「勿論成績もええし。」

「料理、上手。」

「そんな和希ちゃんを平凡の一言で片づける人がいるんだったら、紅葉ちゃんが相手になってくれるわ。」

「任せて。」

「ああ、因みに社会的に抹殺するのなら、任せてね。」

「ちょっと、紅葉ちゃんも、桂子ちゃんも何言っているのっ!」

「いつもの事やない?」

「いつもの事かもしれないけど、物騒な事は言わないで。」

「物騒、違う。」

「そうよ、事実よ?」

「だから、そんな事を堂々と言わないで。」

「ふっ、ふふふ……。」


 急に笑われ、和希はジトリと夏子を睨んだ。


「何笑っているんですか。」

「本当に貴女って愛されているわね。」

「何でそうなるんですか。」

「あら、違うのかしら?」

「違わない。」

「そうね、和希ちゃんの事は好きよ。」

「勿論やね、あっ、ラブ、じゃなくて、ライクやけど。」

「当たり前でしょうが、瑛瑠ちゃん。」

「和希ちゃん、なら、ラブ、いける。」

「紅葉ちゃんは何言っているのよ。」

「本当に楽しいわね。」

「夏子さんの所為で収拾がつかなくなったじゃないですか。」


 和希は恨みがましそうに夏子を睨む。


「あら、お姉さんを疑うの?」

「どこがお姉さんですか?」

「……ふーん?」


 和希が思わず噛み付けば夏子は一瞬凍り付き、次の瞬間真っ黒な笑みを浮かべる。

 和希は思わず、しまったと思ったが、もう出てしまった言葉は戻すことができない。


「和希ちゃんって本当にあの子に似ているわね。」

「……。」


 夏子のいうあの子が誰なのか和希は何となく分かってしまった。

 そして、死んでも自分の愚かさは変わらないのだと実感してしまった。


「ふふふ。」

「夏子さん、顔……。」

「あら、顔がどうしたの?」

「なんか怖いですよ。」

「あら、人の顔を見て怖いだなんて。」

「……。」


 和希は地雷を踏んでしまったと、少し前の自分を恨む。


「ああああああああああああああっ!」


 急に奇声を発する瑛瑠に和希は肩を跳ね上がらす。


「どうしたの?」

「やばい、やばい。」

「何があったのよ。」

「あかあああああああああああああん。」

「だから、何?」

「うああああああああっ!」


 先ほどから奇声を発する瑛瑠に二人が声を掛けるが、瑛瑠はことごとくそれらを無視していた。


「瑛瑠ちゃん。」

「和希ちゃああああんっ!」


 泣きつく瑛瑠に和希は驚きながらも彼女の髪を撫でる。


「どうしたの?」

「くぅううがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「須藤くんが?」

「女に告られたって。」

「えっ?」

「ほんまやって、見たって。」

「えっと、誰情報?」

「ちぃ兄。」

「……。」


 和希は思わず頭を抱える。


「あの腐れ教師。」


 低い声音を出す桂子。


「折る、いいよね。」


 疑問形ではなく、確実に行いそうな紅葉。


「……団結力凄いわね。」


 彼女たちを見た夏子は思わずそう呟いた。


「……。」


 そして、桂子はおもむろに携帯を取り出し、どこかに電話を掛ける。


「もしもし。」


 低い声音に相手は何かを警戒しているような雰囲気を発している。


「ああん?腐れ教師が何を喚いているのですか?」

「桂子ちゃん、やっちゃえ。」

「つーか、実の妹虐めて楽しんでんのかよ、ええ?」

「桂子ちゃん、性格違っているから。」

「……ごめんなさいね、和希ちゃん。」


 和希が思わず、そう言えば、桂子は恥ずかしそうな顔をしながら謝る。


「……。」

「ん?何かしら?和希ちゃんの方に天秤が傾くのは当然でしょ?何で腐れ教師の心配をしないといけないのかしら?」

「……治ってないよ…。」


 和希はこっそりと零れそうになる涙をハンカチで押さえる。


「で、本当にあの腐男子が告られていたの?」

「……。」


 直球で放つ桂子に和希は恐る恐る瑛瑠を見る。

 彼女は先ほどの取り乱しようが嘘のかのように大人しくなっている。


「……。」


 まずいな、と和希はそう思いながらも事の成り行きを見守る事しか出来なかった。


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