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幕間・悲しみの記憶

 夢を見た。


 赤い


 紅い


 朱い


 あかい


 アカイ


 夢……


「うあああああああああああああっ!」


 ぐっしょりと濡れるパジャマに少年は気持ち悪いと思う。


「はぁ……はぁ……。」


 走っていた訳ではないのに呼吸が苦しい。否、苦しいのは呼吸ではない、胸が苦しいのだ。


「かず…にぃ……かず…にぃ……。」


 布団を握り締めた手に水滴が落ちる、しばらくして少年はそれが自分の涙だと気づく。


「なんで…だよ…なんで…だよ……なんで……。」


 乱暴に涙を拭うが少年の涙は止まる事はない。


「たすけて…くれよ…かず…にぃ……。」


 いつも不安に押しつぶされそうになった時、助けてくれたのは自分の血の繋がった家族ではなく、近所に住んでいた年上のあの人だった。

 だけど、その年上のあの人は数年前に自分を助けるために真っ赤に染まって息を引き取ってしまった。

 好きだった。

 大好きだったあの人。

 あの人だけが少年を「冬牙」という少年として見てくれた。


「かず…にぃ…。」


 何度呼んでもあの人は返事をしてくれない、少年は孤独だと思った。


 誰も自分を見てくれない。


 あの父の子。


 あの母の子。


 天才児。


 異端児。


 そんな文字を頭につけて自分を見る周りの連中が少年は大嫌いだった。

 少年は誰も信じないと心に決めてしまった。

 もしも、あの人が生きていればと少年を少年として見る大人は思うだろう、それほどまでに少年はあの人にしか心を開かなかった。

 少年は一人夜に彼の人を想う。

 その姿は子どものはずなのに、大人のようだったと、あの人の姉は後々にそう呟いた。

 そして、幾年の年を重ねても少年は青年と呼ばれる年になっても、彼を癒せる人物は現れる事がなかった……。

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