誘拐されかけました
時が流れ、「かずき」は母親と共に近くにある公園に来ていた。
「かずちゃん、ママはこっちで見ているからね。」
「あい。」
砂場から少し離れたところで母親同士が固まっているので、そちらに母親は向かっていった。
「うん…、いまさら…すなあそびか……。」
本当はこんな事をするよりも本を読んだり、もっと効率的に体を鍛えたいのだが、あきらかに幼女がそんな事をすれば奇異の目で見られるだろう。
そうすれば、間違いなく「かずき」は動きにくくなるのだ。
「それにしても、おんなのながばなしは、いつも、すごいな……。」
「かずき」は遠い目をしながら砂を掘り、それをスコップで固めていく。
「………そういえば……あいつ……げんきにしているかな……。」
「かずき」はふっと空を見上げ、最期に助けた彼の姿を思い浮かべる。
「ここがどこなのか、わからないけど、もし、まえとおなじせかいなら、そんなにじかんはたってないから…。」
「かずき」はカレンダーの日付を思い出し、自分が死んで一年後に自分が産まれたのを知った、そして、もし、自分が死んだ世界ならば間違いなく彼は小学校に既に上がっている事になる。
「……おおきくなったら、こっそりとあいてぇな。」
間違いなく前世の自分よりも男前になっている彼を思い浮かべ、「かずき」は苦笑を浮かべた。
「ま、むりだよな。」
「かずき」が苦笑を浮かべていると、彼女の手元が暗くなる。
「えっ?」
振り返ると見知らぬ男が荒い息で自分に手を伸ばしている。
「かずき」は驚き、思わず悲鳴を上げる。
「きゃああああああああっ!」
「――っ!」
「かずき」の悲鳴で男は思わず手を止めてしまい、その隙に「かずき」は手に持っていたスコップに砂を掬い上げ男の目に向かってかける。
「ぐっ!」
「ママ~~~~っ!」
「かずき」は己の恥を忍んで母親の元に駆けだした。
母親は何事かと思い、男を睨んでいると男は拙いと思ったのかいそいそと逃げ出した。
後々に「かずき」は知ったのだが、最近あの公園付近で不審者が出ていたらしい、そして、数人の子どもが行方をくらませており、それを聞いた「かずき」の母親や周りの母親連中は顔を真っ青にしたのだった。
「……うーん、いちおうごしんじゅつ、おぼえたほうがいいかな?」
「かずき」は今の自分は特別美人や可愛いという分類ではないだろうと、思っているのだが、実は「かずき」が思っているほど普通という訳ではない、それを「かずき」は気づいてはいない。
こうして、「かずき」は一日一日成長していくのだった。