幕間・????
少女は水鏡を見ていた。
それはこの世界では決して扱われないモノ。
「今回俺たちの出番はなさそうか?」
そっと温かなココアの入ったコップを差し出す青年に少女は小さく首を振った。
「分からないわ。」
「そうか…。」
少女の言葉に青年は自分用に用意したコーヒーに口をつける。
「私たち人間はいつだって予想外の事を起こす。」
「そうだな。」
「でも、二度見た未来にならないようにはしたはずだけど……。」
少女は二つの未来を思い出し、小さく溜息を零す。
「ねぇ……。」
少女は憂いの顔を見せて、青年を見つめる。
「私はまだ人の心を持っているかしら?」
何度も、何度も、何年も、何十年も、何百年も、何千年も、少女たちは生きている、だから、少女は不安になる、自分は人の心を忘れていないか。
人を大切にする気持ちを忘れていないか、それを少女は不安に思う。
そして、少女のそんな不安を払拭させるかのように青年は蕩けるような笑みを彼女に向ける。
「大丈夫、シャール、お前は何も変わっていない。」
始まりの人格の名を呼ばれ、少女はハッとなり、愛おしそうに青年を見つめる。
「ありがとう、ロイ。」
この役目は来年の四月までには決まる。
それまでに、何もなければいい。
そうすれば、傷つく人もいない。
今、この時、この時代に生きている人たちの意思を尊重したい。
だから、少女は願う。何も起きない事を。
自分たちが干渉しない事をーー。
歯車は動き出した。
動き出した歯車が何を生み出すのか、少女たちは知らない。
ただ、少女たちは望まぬ世界の終わりに行かないために、ここに居るのだから。




