遭遇
――和希は謎の生命体と遭遇した。
そう、一瞬和希の脳裏にゲームでよくありそうな言葉が思い浮かんだ。
「ここで会ったが百年目。」
校舎を背に立つ謎の生命体が喚く。
三日間自分の目の前に現れて、親友たちを不快にさせる少女に流石の和希も嫌な顔をする。
この時和希は気づいていないのだが、彼女の顔を見た何人もの生徒が驚きを隠せないでいた。
和希自身は知らないが、彼女はこの学校ではかなりの有名な人だった。
何せ美人ぞろいだけど、どこか変わった人間たちを御せる唯一の人物で、しかも、本人も十分に美人の分類に入るのに、気さくで頼りがいのある人物なのだから、有名になるのは当たり前だった。
そして、そんな人物がこんなにも嫌悪をした顔をしたのはきっと幼馴染の少女たち以外では初めてだろう。
因みに、幼馴染の少女たちもこんなにも嫌悪を剥き出しにした表情を見るのも、三回くらいしかない。
それ程、和希は困った表情や怒った表情をしても、ここまでの嫌悪を剥き出しにした事がない程の人物だった。
「どいてください。」
「嫌よ、何で指図されないといけないの?」
馬鹿にしたように笑う彼女に和希はにこやかに笑う。
「指図?違いますね。私は当たり前の主張をしたまでです。」
「……。」
何を言っているの、このモブは、という顔をする彼女に和希は笑みを深くする。
「私はこの学校に学びに来ています、なのに、校舎に行けないように私の前に立ちはばかるのは何故でしょう?」
「それはあんたが、わたしの話を聞かないからよ。」
「それならば、お聞きしましょう。」
「上から目線で見ないでよ、モブ。」
「……聞かせていただけますか?」
いやいやながら言い換える和希に周りにいた通行人の数人が顔を引きつらせる。
「あんたのようなモブにわたしのようなヒロインに口を利けるなんて、光栄に思いなさいよね。」
「……。」
「そうね、さっさと、冬牙様を紹介しなさい。」
「……。」
「どうせ、隠しているんでしょ、いい加減にイベント通りに動きなさいよね。」
「……。」
「あんたのような、モブキャラなんてさっさと死んでしまえばいいのに。」
「………………………………しろ……。」
和希から零れた低い声が聞き取れなかったのか、彼女は怪訝な顔をしている。
「いい加減にしろって言っているのよ。」
和希は満面の笑みを浮かべてそう言い切る。
「死ねって、どこの餓鬼よ。」
「えっ。」
「自分の思い通りにならない、それは他人の所為。
本当にそうなの?
まあ、もし、そうだとしても、誰かを紹介してほしくても、その態度はないんじゃないかな?
というか、私と何の関係もない人、だったら、紹介もくそもないよね?
なのに、何で私に執着する訳?
私はいいわよ。
でもね、私じゃなくて、他の人にも迷惑が掛かっているのがわからないの?
貴女は一体いくつなの?
確かに私たちは保護される未成年ではあるけれど、あと少しで選挙権も持ついい大人になるのよ。
それなのに、貴女がしている事は本当に正しい訳?
もし、そう思うなら、私は容赦なく貴女を蔑む。」
和希は言いたい事を言いきり、すっきりしたような顔で彼女を押しのけ、校舎へと足を向ける。
「ま、待ちなさいよ。」
「……。」
和希は彼女を無視して前を向いて進む。
和希は己の信じた道を進む。
それは決して正しいものではないかもしれないけれど、和希は自分の心情を曲げない。
それが、「かずき」という人だから……。




