洗いざらい話す
屋上についてお弁当を広げる和希と紅葉、購買でパンを買ってきたのかクリームパンの袋を開ける瑛瑠、コンビニのおにぎりを開ける桂子。
「えっと、電車に乗れなかったのはちょっと……事情があって。」
「事情って?」
桂子の質問に僅かに和希は箸を止める。
「うん、母の知り合いの(知り合いの)人の所に泊まったの。」
「ふーん、和希ちゃん、うちらに隠し事はあかんで?」
鋭い瑛瑠に和希は苦笑を浮かべる。
「何の事かな?」
「和希ちゃん、お箸反対。」
「あっ……。」
本来摘まむ所と上の部分が逆さになっており、和希は自分の動揺に今さらながらに気づく。
「………。」
三対の目に見詰められ、和希は溜息を零す。
「さっき言った事は本当だけど、これから言う事は絶対に誰にも言わない事。」
真剣な目で見て言うと三人も真剣な顔で頷いてくれた。
「あのね……、私お母さんの知り合いの人にある人の面倒を見て欲しいと言われたの。」
「ふーん、どんな子?」
「クオーターで銀色の髪で蒼の瞳の子。」
「男?女?」
「男。」
瑛瑠や紅葉の質問に無難に応えていく和希だったが、次の桂子の質問に言葉を詰まらせる。
「いくつの人?一人暮らし?」
「……。」
「和希ちゃん?」
促され、和希はしぶしぶ答える。
「年齢は二十一歳…一人暮らしだった。」
「……。」
「……。」
「……。」
黙り込む三人に和希は彼女たちから目を逸らす。
「おばさんは知っているの?」
「それはもちろん知っているよ。」
この質問に三人はどこかホッとする。
「その人、ゲイやの?」
「はっ!何でそんなんになるのっ!」
瑛瑠の言葉に和希は目を見開く。
「なんや、ちゃうのか。」
「もー、驚かせないでよね。」
おどける瑛瑠にいつもの「病気」だと気づいて和希はホッとする。
冬牙にはごくごく普通の幸せを掴んで欲しいと願っている和希は別に同性愛者を否定するつもりはないのだが、それでも、幼いころから知っている彼が彼氏を連れてきてしまったらどうしようかと、本気で慌ててしまった。
「和希ちゃんはその人の事どう思う訳?」
「手のかかる大きな子ども。」
即答する和希に三人は苦笑する。
「和希ちゃんにしたら同級生の子でも子供扱いの時あるもんな~。」
「そうかな?」
「無自覚。」
どこか呆れたような顔をする紅葉に和希は首を傾げる。
「してるかな?」
「こればっかりはな……。」
「しゃーない、和希ちゃんやから。」
「ん。」
酷い言われようだが、いつもの事なので和希は受け流す。
「それで、面倒は昨日一日?な訳ないよね?」
「……。」
和希は冷たい刃が首筋に当てられているような気がした。
「沈黙ちゅーことは。」
「正解なんだね。」
「抹殺、決定。」
「こ、紅葉ちゃんっ!」
物騒な事を言う紅葉に和希はギョッとなる。
「紅葉ちゃん。」
「何?」
「抹殺はあかんよ?」
瑛瑠の言葉に和希はまともな人が残っていたと思ったが、すぐにそれは間違いだと気づく。
「ここは社会的抹殺にせんと、物理的抹殺やったら警察に捕まるで?」
そうだ、と和希は思い出す。
ここにはまともな人間なんていやしない、ここには変人しかいないのだと今さらながら気づく和希は肩を落とす。
「どうやって抹殺しようかな?」
ポツリと呟かれた桂子の言葉に和希は撃沈するのだった。




