えっ?えっ?ええええええっ!
(可笑しい、可笑しい……。)
一輝は最期の記憶を思い起こしながら混乱していた。
彼は今真っ暗な空間にいた。
ずっと眠っていたような感じがしていたが、不意に眠りから覚めたら真っ暗な空間にいて驚いていると、急に何かに引き寄せられる感じがした。
そして、強烈な痛みを覚えながらも彼は意識を保っていた。
刹那、明るい空間に出た。しばらくして、繋がっていた何かが切り離されてしまい苦しくなり叫びをあげた瞬間、肺に空気が入って来た。
何が何だか分からないまま、一輝は生まれ変わっていたのだが、彼はその事に気づいていない。
何せ、聴覚も、視覚も、何もかもが情報を取り入れられない状態で口元に近づけられたものを吸う、手に当たった物を握るという反射しか出来ないでいた。
五官がようやく機能し始めてから一輝は自分の置かれている立場に気づき始めた。
「かずちゃん、ママですよ~。」
「可愛いな、やっぱママ似だな。」
「あら、耳とか鼻とかはあなたそっくりよ。」
明らかに夫婦の会話に心の中で一輝は遠い目をする。
(お袋、親父、姉貴、冬牙、どうやら、俺は転生というものをしてしまったようです、しかも、記憶有で……。)
赤ん坊のころは本能が先に出るお蔭で、一輝はテレビを見るかのように落ち着いて周りを見る事が出来た。
(それにしても、こっちの母親の趣味か、なんか着る服とか何かと女の子趣味の物が多いな……俺、男なのにな…。)
遠い目をしていた一輝だったが、新しい父親がお風呂に入れようとした時に真実を初めて知ってしまった。
(えっ?えっ?えええええええええっ!)
一輝は以前の自分についていたモノが今の自分についていない事に初めて驚き、思わず泣き叫んでしまい、父親を困惑させるのだが、残念ながら混乱中の彼、否、彼女は気づく事が出来なかった。
(前略、お袋、親父、姉貴、冬牙……どうやら、俺一輝は女に生まれ変わってしまったようです……マジどうしよう……泣きそう……。)
こうして、女と自覚した一輝の第二の生がゆっくりとだが進み始まった。