宣戦布告
翌朝、いつもよりも早い時間に目覚ましが鳴り、和希はもごもごと布団の中で動くが、すぐにいつもと違う感じに気づき、天井を見上げギクリと体を強張らせた。
「………あっ…そうだった。」
寝ぼけた頭で昨日何があったかを思い出し、和希の緊張が解ける。
「そうだ、ここは日向さんの家だ……。」
口に出して、和希は自分が何をしないといけないか考える。
時計を見て、まだ五時だと確認する。
学校には八時に家を出れば間に合う、三時間で朝食、そしてお弁当を作り、洗濯機を回して、干さないといけない。
和希は体を起こし、制服に着替えはじめる。
本当ならば着替える前に顔を洗ったりしたいところだが、ここは勝手知ったる自分の家ではなくよそ様の家で、しかも、異性がここにいるのだ。
和希は見苦しくない程度に身を整え、部屋から出る。そして、その時に昨日夏子に買ってもらったエプロンをつける。
「さて、始めましょう。」
和希は洗面所に行き、洗濯機の前に立ち、服を色物と白色の物に分ける。
「うーん、二人だからそんなにないか。」
もし、この場に冬牙がいれば間違いなく和希に待ったをかけただろうが、残念ながらここには彼女一人しかいない。
そして、もし、この和希が普通の少女だったら、男性の下着を見て顔を赤く染めていただろうが、不幸か幸いか彼女には男性の知識がある為に別に何とも思う事もなく冬牙の下着も平気で触る。
「えっと、ああ、あった。」
浴槽のお湯を洗うためのお湯として再利用する為にホースを探していた和希だったが、順調にそれを見つけた。
サクサクと進める彼女は洗濯機を回している間に台所に向かう。
朝食の下ごしらえと同時にお弁当を二つ作り始める。
お弁当のおかずを二品作り終えたくらいに丁度一回目の洗濯物を洗い終えた和希は一度手を止め、洗い終えた物を洗濯機から出し、二回目を回し始める。
和希は洗い終えた洗濯物を持ってベランダに出て洗濯物を干していく、そして、再度お弁当作りを始め、後は詰めるだけになった時に二回目の洗濯物も洗い終わったという事を知らせるアラームを耳にする。
「全国の母親は凄いな…。」
毎朝、こんな事をして休みがないなんてと、自分の母親に尊敬の念を覚える和希であった。
そうこうしている間に、和希は洗濯物を干し終え、お弁当を詰めはじめると丁度七時を回ったので、冬牙を起こしに行く。
「日向さん?」
ノックをするが起きる様子はない。
和希は溜息を零すと、手に持っていたフライパンとお玉で音を立てる。
喧しい音に耐えられなくなったのか、中から不機嫌な顔が現れるが、和希はニッコリと笑いそれをかわす。
「おはようございます、朝食ですので、起きてくださいね。」
「おい。」
「いいですか?」
ニッコリと微笑む和希は有無を言わさないような迫力を見せる。
「大学に行く時間なんて私は知りません、ですので、毎朝このくらいに起こしに来ます、ですので、それがいやでしたら貴方のスケジュールを前日の夜までに教えてください。」
「しなくてもいい。」
「いいえ、駄目です。」
和希の言葉に冬牙は眉に皺を寄せる。
「どうせ、大学だって休みがちなんでしょ?」
「……。」
「私は貴方が真っ当になるまで、面倒をみますので、貴方にとっては余計な事を何度でもやります。恨むのなら今までの貴方の行動を恨んでください。」
舌打ちをする冬牙に和希はさらに笑みを浮かべる。
「私はどんな事をしてでも、自堕落な貴方を真っ当に変えてみせますので、よろしくお願いしますね。」
二人の間に火花が飛び散っている。
冬牙は余計な事をというように渋面を作り、和希は闘争心を剥き出しに微笑んでいた。
「さて、朝食はぜひ食べてくださいね。」
和希の言葉にまた冬牙は舌打ちをする。




