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前世の俺は攻略キャラだったらしい  作者: 弥生 桜香


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文化祭 紅葉3

 到着した千時はすぐさま頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。


「大丈夫ですか?」

「これが大丈夫に見えるか?」

「見えませんね。」


 千時は小さく悪態を吐くが、詩音はそれを聞かなかったことにした。


「やりすぎだぞこれは。」

「そうでしょうか?」

「……。」


 しれっとそんな事を言う詩音に千時は彼を睨む。


「その分厚いフィルターを取れ。」

「無理ですね。」

「自覚はあるのか。」

「ええ、ありますよ。」

「お前も相当な奴だな。」

「ご安心ください、貴方も相当な人間だと思いますよ。」

「常識人だと思うだがな。」

「そこまで常識人ではありませんので、ご安心を。」

「酷いな、というか、安心をって何だ、何を安心しろっていうんだ。」

「まあ、色々です。」


 千時は眉を寄せ頭をガシガシと掻く。


「被害者……加害者………あー、ここに居る人間が全員か?」

「ええ、被害者は東雲さんだけ、加害者はこちらに伸びている人たちです。」


 この状況を見て誰が被害者なのか、加害者なのか分からない状況なのだが、詩音はさらりとそんな事を言う。

 千時は色々言いたそうな顔をするが、これ以上時間を無駄にすると分かっているので、ため息一つで我慢をする。


「こいつらは何とかするから、お前は東雲を保健室に連れていけ。」

「ええ、そうですね。」

「必要ない。」


 詩音が千時の言葉に頷くが、それを紅葉が制する。


「東雲さん?」

「和希ちゃん、来る。」

「……。」

「本当にお前らの連携は何なんだ。」

「流石、和希ちゃん。」


 紅葉の言葉の性格の意味を理解できない詩音は首を傾げ、それを正確に理解した千時は呆れた顔をする。

 そして、紅葉が何故か胸を張る。


「えっと、どういう意味ですか?」

「あー、どういうやり取りをしたかは分からないが、神崎が保健室に言って救急箱を借りてきてこっちに向かってくるようだ。」

「いつの間に。」


 詩音の問いかけに千時は自分が分かる範囲だけを簡潔に言い、彼はそれを聞き、軽く目を見開く。


「さっき。」


 紅葉はそう言いながら携帯を振る。その画面には和希とのやり取りが映されていた。


「随分心配されているじゃねぇか。」

「読むな。」

「誰が見せていると思っているんだ。」

「……。」


 紅葉はジトリと千時を睨む。


「何だその目は。」

「……。」

「は―。」


 黙って自分を睨みつけてくる紅葉に千時は頭をガシガシと掻きながら盛大なため息を零す。


「お前らはほんと毎度毎度。」


 自分の妹といいその友達も本当に類友だと千時は小声で吐き出すが、この場にいる者は耳もいいので、その呟きもばっちり聞こえていた。


「そんなにも頻繁何ですか?」

「あっ?聞こえていたか。」


 詩音の言葉に千時はしまったというように顔を顰める。

 確実に事実を言えばこの男が何をしでかすか分かったものではない。


「ええ、はっきりと聞こえていましたよ。」

「……。」

「ちゃんと吐いた方が貴方の身の為ですよ?」


 笑っているのにその目の奥が笑っていない詩音に千時は自分が失敗したことを悟り舌打ちをする。


「一応聞いておくが、聞いてどうするつもりだ?」

「さあ、分かりませんが、聞いてから決めるつもりですよ。」

「……おれを巻き込むなよ。」

「大丈夫ですよ、犯罪者にはなりたくないですから。」

「……。」

「後でメールする。」

「ちゃんと貴方が把握している人全員でお願いします。」

「……。」

「もし、ワザと偽ったりしたら分かっていますよね?」

「本当にこいつらの周りの連中は何なんだよ。」

「それを貴方がいいますか?」

「……。」


 詩音の言葉など聞いていないかのように、本当に自分の周りには厄介者しかいないのだと千時は内心嘆くのだった。

 しかし、彼を知る人物がいたのならばきっとこういうだろう、「類は友を呼ぶ」結局はお前も同類だ、と

 つまりは千時も千時なのだ。


「……少しいいですか?」


 詩音は急に表情を真剣なものに変え、そして、紅葉に聞こえないように千時に小声で尋ねる。


「何だよ。」


 不貞腐れたような顔をするが、詩音の胃を組んで小声で返す。


「これは偶然だと思いますか?」

「……どういう事だ?」

「これは仕組まれた事じゃないかと思いまして。」

「……。」


 詩音の言葉に千時は鋭い目をする。


「どういう事だ。」

「いえ、こういった輩が簡単に侵入できるのでしょうか、そもそも今回の文化祭は入場チケットがあります、それなのに、明らかに関係のなさそうなこんな人たちが入ってこれると思いますか?」

「……それは…。」


 詩音の言葉に千時は口元を隠すように手を当てる。


「もし、無断に入るとしたらもっと騒ぎになっていますよね、それなのに、それがない、つまり、こいつらは堂々と入る手段があった。」

「もしくは誰かが手引きした。」

「ええ、彼女を狙ったのは偶然かもしれません、でも、彼らが入ってきたのは決して偶然とは思えませんが、どう思います?」

「……。」


 詩音の言葉に千時は考える。


「………お前、この後時間は?」

「夜は空いていますよ。」

「…そのまま空けとけ、連絡する。」

「分かりました。」


 ひとまずこれ以上は憶測でしか話すしか出来ない、だから、千時はこの後自分がすべきことを脳内でまとめる。


「厄介ごとを持ち込みやがって。」


 見知らぬ誰かに千時は恨み言を呟くのだった。

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