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前世の俺は攻略キャラだったらしい  作者: 弥生 桜香


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文化祭 2

 予想外の出来事から始まった文化祭だが、その後は特に大きな問題もなくお昼がやってきた。

 和希たちのやる事は簡単に言えば、制作したもの説明だった。

 他の人は作った衣装を着て、看板を持って呼び込みをするのだが、何故か和希と紅葉は免除されていた。

 いや、最初はちゃんとそれでシフトを組んでいたのだが、朝の和希の騒ぎがあった為、和希とついでに紅葉のシフトが変わった。

 なので、二人は教室で入ってきたお客に説明などをする。

 因みに写真を一緒に取ってほしいとお願いされるという事が何度もあったが、その時は同じシフトの子たちが和希との間に割り込み、写真は厳禁です、と笑顔でお断りをしていたのだった。

 大人しく引く人はそれで良かったのだが、中には無断で写真を撮ろうとする人もいるので、その時は紅葉の出番だった。

 写真を撮った人が居たら、まず、その人を和希にバレないように拘束し、別室で紅葉が物理的にお仕置きをするのだが、現段階で和希にバレてはいなかった。

 因みに普通に写真を断った件数十件ほど、紅葉にお仕置きされたのはその倍以上だった。

 色々陰では問題ごとはあったのだが、それでも、今朝のような大事がなく、和希は自分の仕事を全うしていた。

 そして、あっという間に十二時になったのだった。

 和希と紅葉の当番は午前中だけだったので、今からお昼に行くつもりで教室を出ようとする。


「神崎さん、東雲さん。」


 呼び止められた和希は足を止めるが、紅葉は無視して外に出ようとするので、和希は彼女の腕を掴む。


「ん…。」


 不機嫌そうな声を出す紅葉に和希はニッコリと微笑む事で黙らす。


「何かな?」

「その格好で行くの?」

「うん、宣伝にもなるでしょ?」

「面倒。」


 心配そうな顔で和希たちの格好を見る女子生徒に和希は苦笑しながらそう言う。

 そして、着替えるのが面倒だと思っている紅葉はそのまま思った事を口にしていた。


「……でも、何か遭ったら…。」

「大丈夫、一人にはならないし。」

「ん、和希ちゃん、守る。」

「……。」


 譲らない和希と凛として言い切る紅葉に女子生徒は何を思ったのか、眉を下げて小さく頷いた。


「気を付けてね。」

「うん、行ってくるね。」

「ん。」


 女子生徒は心配そうに和希たちの背中を見送っていたが、和希たちはその事に気づく事はなかった。


「さて、紅葉ちゃん、お昼どうする?」

「ん、お任せ。」

「お任せって。」


 和希はパンフレットを片手に苦笑する。


「どうしようかな…。」

「……瑛瑠ちゃん、桂子ちゃん、って?」

「あの二人は私たちと違って今から当番だよ。」

「……。」

「聞いてくるって事は、忘れてた?」


 少し呆れたように言う和希に紅葉はスッと目を逸らす。


「まあ、今朝から色々あったし今日は小言はなしにするけど……。」


 それでも、少し和希は紅葉を軽く睨んでしまう。

 紅葉はその睨みが怖かったのか、わずかに肩を揺らした。


「後で二人に簡単な差し入れとか持って行こうね。」

「ん。」

「さーて、お昼どうしようかな。」


 和希は気持ちを切り替えながらいくつか候補を考える。


「うーん、この時間だしいろいろ混んでるだろうな。」

「ん。」

「誰かにお願いして食券だけでも買ってもらうべきだったかな、でも、あの時はそんな気分じゃなかったし。」

「……。」


 口元に手を当て、ぶつぶつと呟く和希に紅葉はホッとしながら彼女を見ていた。

 今朝のあの出来事が彼女の中で傷になっていないようで本当によかったと思った。

 でも、安心なんかできない。

 何せまだ犯人は見つかっていないのだ、いや、候補は何人かいた、そして、そのアリバイを探ってもらっている。

 そうする事で、数人まで絞っており、その中に紅葉が犯人だろうと思っているあの女子生徒もいた。

 だけど、証拠がない。

 目撃情報がないのが痛手だった。

 そして、すれ違う女子生徒から紙切れが紅葉の手に渡される。

 紅葉は和希にバレないようにこっそりとそれを見る。

 五人ほどいた容疑者が三人に絞られた。

 でも、決定的な物がない。


「……ふう。」


 紅葉はこっそりとため息を零す。


「紅葉ちゃん?」

「何でも、ない。」

「そう?」


 紅葉のため息に気づいた和希は不思議そうな顔で振り返るが、紅葉は首を横に振った。

 釈然としていない和希だったが、原因も分からないので、そっとしておくことにしたようだった。


「……。」


 紅葉は紙切れを近くにあったゴミ箱に捨てる。

 手元にあって和希の目に留まれば彼女はきっと困惑し、そして、こんな危ない事はすぐに止めさせるように言うだろう。

 それは紅葉にとっても、同士にとっても出来ない事だった、だから、こうしてこっそりと秘密裏に動くのだった。


「紅葉ちゃん、取り敢えず、外の屋台を見ようか。」

「ん。」


 和希の提案に紅葉は頷く。


「それにして、人が多いね。」

「ん。」

「紅葉ちゃんの所は誰か来るの?」

「知らない。」


 紅葉の入場チケットは両親に預けたが、残念ながら二人も祖父母たちも予定があった為、今日と明日は来れないので、ある人物にチケットを渡したからと言っていた。

 その時の企んだような母親の表情がどこか引っかかりを覚えたが、紅葉はスルーしてしまったのだ。

 そして、今から一時間後、その時どうして母親を問い詰めなかったのかと、公開をする事になるのだが、今の紅葉は知りようもなかった。


「和希ちゃん、は?」

「お母さんと、冬牙さんに渡してるけど、二人が来るかは分かんないかな。」

「……。」


 冬牙の名前を出したことで紅葉は眉間にしわを寄せる。

 和希はどうして紅葉がそんな顔をするのかと少し疑問を抱きながらも、大丈夫、大丈夫と宥めるのだった。

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