買い物
和希は買い物というものを舐めていたのだと初めて知った。
男性の時も確かに姉の買い物に付き合った時は凄く疲れていたのを覚えていたが、女性になって自分も買い物を楽しめるようになったはずだったのに、今回自分はそんなに変わっていなかったのだと思い知らされた。
「あ、これいいんじゃない?」
「いえ、エプロンいりませんから。」
フリルのふんだんに使われたエプロンはどこかのバカップルというか新婚さんというかギャグで使うようなファンシーなエプロンだった。
「やっぱり、白色よりもピンクだったかしら?」
「いえ、色の問題じゃなくて…。」
「水色もいいわね。」
「……。」
和希は助けを求める為にあたりを見渡すが、残念ながら何かを察していた冬牙は早々に姿を消していた。
「……どれか、絶対に選ばないといけないですか?」
「ええ。」
清々しい程の笑みを浮かべる夏子に和希は溜息を零す。
「それなら…。」
和希は三種類の色を見てどれがマシか考える。
ピンクは論外だ、自分に似合うはずがないし恥ずかしい。
水色は確かにマシかもしれないが、よくよく見ればピンクや白よりもフリルの量が倍近くあるので、それを着こなす自信がない。
つまりは…。
「白にします。」
「やっぱり、新婚さんは白のエプロンよね~。」
完全に突っ込む気力すらなくなった和希は静かに項垂れた。
「どうする?キャミソールと短パンも買っとく?」
「何でですか?」
「え~、うまい具合で見せれば裸――。」
「言わなくていいですっ!というか絶対にやりませんっ!」
夏子の言葉に思わず自分がそんな恰好をしてしまっている想像をしてしまいあまりの出来に吐き気を覚える。
「絶対に似合いませんからっ!」
「あら、そんな事はないわよ。」
「ありますよ。」
「もう、本当に自分に関しては評価が低いのはあの子と本当に一緒ね。」
諦めたような溜息を吐く夏子に和希は眉を寄せる。
「和希ちゃんはあの餓鬼どう見る?」
「餓鬼って、と……日向さんですか?」
「ええ。」
和希は危うく昔の癖で冬牙の下の名前を呼びかけたが、今の自分はそんな資格がない事を思い出す。
「何というか、危うい、ですね。」
「いや、そっちじゃなくて…。」
「そっちじゃない?」
「……………和希ちゃんって今まで誰かと付き合った事ある?」
「無いですけど?」
和希は何のためらいもなく即答し、夏子は思わず頭を抱える。
「ええ、確かに純情な子だと思ったわよ、でもね、流石に一人くらいいるでしょここは……。」
「あの?」
「和希ちゃん。」
「はい?」
「男性としてあの子の事をどう思う?」
「………カッコいいんじゃないですか?」
和希は本音で言った、間違いなく今の冬牙は前世の自分よりもかなりかっこよく異性にもてるだろう。
しかし、夏子が望んでいた答えとは全く違う事に和希は気づいていない。
「………前途多難だわ。」
「え~と…。」
何故か肩を落とす夏子に和希は何も言う事が出来なくなった。




