呆れてモノも言えません
和希は冬牙の部屋に案内され、溜息を吐きたくなった。
せっかく2LDKであるのにも関わらず、生活感ゼロの無機質な空間となっていた。
一室は完全に何もなく、一室はベッドのみ、リビングは椅子代わりのソファと小さな机だけで台所には冷蔵庫と電子レンジくらいで、まだ冷蔵庫の中を確認していないが入ったとしても飲料だけだろうと、和希は予想した。
「本当にいつ来ても何もないわね。」
「……。」
「台所借りますね。」
和希は早速台所に入り、色々と確認するが、本当にモノがなかった。
辛うじて柄やデザインが全く違うカップを三つ用意し、何でそれだけは揃っているのかと思うのだが、コーヒーの豆とそれを挽くコーヒーミルを使ってコーヒーを三人分用意する。
「お待たせしました。」
「あら、いい匂いね。」
「……。」
完全に機嫌を損ねている冬牙を無視して和希は夏子にカップを渡す。
「ありがとうございます、あの、夏子さん。」
「何かしら。」
「この後時間ありますか?」
「あるわよ。」
「それなら、買い物に付き合って欲しいんです。」
「ああ、そうね、布団とか必要だからね。」
「はい…。」
「それに、キッチン周りのモノも必要かしら?」
「自活したいのでできれば。」
「了解よ。」
快く引く受けてくれた夏子に和希はホッと息を吐いた。
「ありがとうございます。」
「いいのよ、こっちが無理言っているんだし、それに財布の当てもあるしね。」
「えっ?」
「いいでしょ?」
「ああ、あのクソの金だし、突き返しても何倍になって帰ってくるからうんざりする。」
「なら、十分ね。」
「えええ?」
話の見えない和希は戸惑いを隠せないでいた。
「あの…。」
「さーて、行きましょうっ!」
「……。」
さっさと玄関に向かう二人に和希は何か言いたかったが、夏子の高いテンションの所為で話しかける事が出来なかった。
「ううう…いったい何なの。」
まだまだ色々と知らない事が多すぎたが、それでも、和希は諦める事はしない、もし、諦めてしまえば冬牙は間違いなく自分の殻にこもってしまう。
それならば、和希は踏み込む道を選んだ。
それは「一輝」の過去の想いではないく、今を生きる「和希」としての確かな意思だった。




