表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の俺は攻略キャラだったらしい  作者: 弥生 桜香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/260

ストーカーじゃないからっ!

「みなさーんお昼どうします?」

「海の家があるからそこで食べれば?」

「人数多いから持ち帰りの物の方がいいじゃねぇ?」

「うち、焼きそば。」

「フランクフルト。」

「何人くらいで行けばいいかな?

「三人くらいで買い出しでいいんじゃない?」

「さんせー。」


 口々に自分の考えを述べていく。

 そして、和希は手を上げる。


「私買い出しに行きますね。」

「いやいやいや、和希ちゃんはいつも働きすぎや。」

「えっ、でも…。」

「そうよ、三人だったらそこの人たちがちょうどいいじゃないかしら?」


 桂子はそう言うと流し目で男性陣を見る。


「おい。」

「逆らうな、少年よ。」

「……。」


 文句を言いたげな空也。

 首を振って悟りを開いているような目をする千時。

 そんな二人とは違い、冬牙はいつも通り自分は関係ないというような態度でいた。


「でも、この三人だったらまた逆ナンに合うんじゃないかしら?」


 麗良の指摘に全員が黙り込む。

 黙っていればイケメンな三人。

 そんな三人に肉食な女子は黙っているだろうか?

 いないだろう。


「それはいややな。」

「そうね、先生はどうでもいいですけどね。」

「どうでもいい。」

「もう、面倒ね、じゃんけんで決めましょう。」

「それがいいわね。」

「そうしましょうか。」


 夏子の言葉に全員が賛成をする。

 多分、このまま話していても進まないのが分かっていたからだ。


「じゃんけん、ぽん。」

「……。」

「……相子ですね。」

「人数多いからな。」

「えっと、それじゃ、男性一人、女性二人でいいじゃないですか?」

「いや、女性陣と男性陣で負けたやつでいいじゃねぇ、もし、人数が多かったら、そこからまた、じゃんけんをすればいいし。」

「そうするか。」


 こうして、男性、女性に分かれてじゃんけんをする。


「じゃんけん…ぽん。」

「あっ…。」

「……。」


 男性陣は一発で決まる。

 一方、女性陣は、数度の相子が続き、ようやく、決まる。


「よろしくお願いしますね。」

「……。」

「……。」


 結果、女性陣は和希、紅葉。

 男性陣は冬牙だった。


「和希ちゃん、大丈夫なん?」

「うん、大丈夫だよ。」


 瑛瑠の言葉に和希は苦笑しながら頷く。


「それじゃ、行ってきます。」

「もしなんかあったら、連絡してな。」

「うん、そうだね。」


 できれば何もなければいいんだが、冬牙を一方的に敵視している紅葉の所為で、流石の和希も大丈夫とは言い切れなかった。

 どこか不安を感じるが、それでも、和希は二人を引き連れて歩き出す。

 先頭に和希、二、三歩離れて並んで睨みあいながら歩き出す紅葉と冬牙、不穏な空気のお陰で、彼女たちに近づく勇者はいなかった。

 そして、何事もなく海の家にたどり着く。

 繁盛しているようで、短い列が出来ている、その光景に和希はポツリと呟く。


「中で食べない選択でよかった。」

「ん。」

「それに、大勢じゃなくてよかったな。」

「そうですね。」


 和希の言葉に二人は頷き、冬牙はさらに自分の意見を口にする。

 そして、三人は周りからの視線を感じながらも、何事もなく進んでいく。


「大変お待たせしました、ご注文は――。」


 聞き覚えのある優しい声に和希は始め何も感じていなかったが、相手はそうじゃなかった。


「日向、それに、東雲さんとそのお友だちさん。」

「えっと……。」


 名前を教えてもらったはずなのに、和希は思い出すのに時間を要する。

 因みに残りの二人は思い出す努力をする事しない。

 冬牙は無関心で、注文を言う。


「焼きそば、三つ、フランクフルト三本、かき氷――。」

「ちょっとお待ちください。」


 冬牙の注文に一瞬固まっていた詩音はハッとなり、メモを取り始める。

 そして、和希はようやく、詩音の名前を思い出す。


「叶谷さん、でしたよね?」

「はい、お久しぶりですね。」


 詩音は冬牙の注文をメモを取りながら、和希に微苦笑を向ける。


「それにして、日向たちと旅行――。」

「ストーカー…。」


 詩音が和希に世間話をしようとしたとたん、紅葉の言葉から不穏な言葉が漏れる。


「えっ?」

「……。」

「えっ。」

「まさか、あの店員さん。」


 紅葉の不穏な言葉は瞬く間に広がり詩音に視線が集まる。


「ち、違いますっ!というか、東雲さんストーカー行為に遭っているんですか、師範とかに相談しないとっ!」

「怪しい。」

「僕がですか、僕はバイトです、本当に、バイトなんです、というか、東雲さんがここに居るのなんて本当に知りませんから。」

「……和希ちゃん、ストーカー…違う?」

「違います、というか、そちらの人は日向の彼女さんですよねっ!」

「えっ!」

「……。」

「……。」


 詩音の爆弾発言に和希は顔を真っ赤にして固まる。

 そして、残る二人は黙り込むがその表情は違った。

 冬牙は何を考えているのか分からない無。

 紅葉は苛立ったような顔。

 テンパっている詩音はその事に気づくことなく、真っ赤な顔で叫ぶ。


「それに、僕のタイプは君みたいなクールな女性ですからっ!」

「……そっ。」

「絶対に、ストーカーなんてしません、あんな恐ろしい行為誰が他の人にも出来るんですかっ!」


 その叫びは切実で、和希はもしかしたら、彼自身もストーカー行為に遭っていたのではないかと考えてしまう。

 そして、それは周りも同じだったのか、詩音に同情の目を向けている。


「なら、いい。」


 あっさりと紅葉は引き下がり、長い髪をなびかせ、商品の受け取り口に向かう。


「…………何なんだ…。」


 目を白黒させる詩音に和希は不憫に思いながらも、何も言う事が出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ