幕間・夢か現か
――冬牙っ!
懐かしい声が聞こえた気がした、でも、その声は記憶している声よりも高くまるで女のような声だった。
――この馬鹿
冬牙は笑う、ああ、やっぱりあの人だ。
暖かい俺の太陽
優しい木
乾いた喉を潤す水
生きていくために必要な空気
自分を取り巻く全てがあの人だ。
目を開けたら彼がいてくれるだろうか、否、いるはずがない、あの人はもうこの世にはいない、ならば、次に目を覚ました時に彼がいてくれるのなら、自分は死んでいるのだろうか?
冬牙はそう考えフッと笑った。
それならばそれでいい、と。
そうすれば、あの人ともう一度過ごせるのなら、もう、この世には未練などないのだから。
刹那、右手に温もりを感じた。
誰だ?そう冬牙は首を傾げた。
暖かい、涙が出そうになる。
かずにい?
そう、あの人の温もりにそれはよく似ていた。
だから、浮遊感にも抵抗せず、目覚めに対してもすんなり受け入れてしまった。
冬牙が目を開けるとそこは真っ白な天井が見えた。
「こ…こ……。」
ガタンという音が聞こえ、そちらに顔を向けると見知らぬ少女がそこにいた。
「気が付いた…。」
普段なら気にもかけないのだが、この時ばかりはその声が心地よいと感じてしまった。
「気分悪くないですか?」
「……だ…れ…だ。」
「…神崎といいます。」
「……夏子さんの縁者か?」
「……。」
冬牙が問うと少女は曖昧に微笑んだ。
静かな沈黙が二人の間に落ちるがそれは決して気まずい、というものではなくどこか心地よい物だった。
そして、その沈黙を破る音が近づいてきた。
バタバタという足音と女性の叱責の声が聞こえたと思ったら扉を壊す勢いで誰かが飛び込んできた。
「このクソガキ初っ端から迷惑を掛けさせないでよねっ!」




