上辺だけ平和な日常
和希は重い足取りで電車に乗った。
「はぁ……。」
「どないしたん?」
「溜息つく、幸せ、逃げる。」
「何かあったの?」
同じ駅で乗り込む三人の親友に和希は苦笑を浮かべた。
「うん、昨日お母さんの知り合いの人に頼み事されちゃって。」
「何というか、昨日は色々厄日やったんやね。」
「うん。」
「大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫だよ、紅葉ちゃん。」
「まあ、昨日のあの子はあたしたちが近づけないように頑張るから。」
「いいの?」
「ええよ、あないな子か弱い和希ちゃんにはきついやろうし。」
「そんな事ないよ?」
「和希ちゃん、か弱い。」
「そうね。」
「いやいや、この中で多分喧嘩とかの腕前なら二番目だし、メンタルだってかなり鍛えられてるしね?」
「そうかもしれないけど、和希ちゃんって一見するとか弱い美少女だし。」
「いやいや、それはないって、どこにでもいる平凡ちゃんだよ、私は。」
「そないな事ないと思うけどな。」
「瑛瑠ちゃんみたいなはっきりとした美人さんじゃないし。」
「瑛瑠ちゃん、黙る、美人、確かに。」
「紅葉ちゃんだって和風美人だし。」
「ただ、無口だし、喋っても単語ばかりだけどね。」
「桂子ちゃんはふわゆるの美少女さんだし。」
「ただのゲーマーやけどね。」
「私なんて何の取り柄もない平凡だよ。」
「………ほんまに。」
「分かってない。」
「和希ちゃんだって十分モテるのに。」
「えっ?」
三人の言葉に顔を強張らせる。
本気で和希は自分がモテるとは思っていない、だけど、それをバッサリ切り捨てようとしても彼女たちの表情を見ればそれも出来ない。
「冗談でしょ?」
「…無自覚はあかんな。」
「ん。」
「ま、そこも和希ちゃんの魅力と言う事でしょう。」
完全に三人は諦めたのか溜息を吐いた。
「えっと……あれ?そう言えば須堂くんは?」
「空也?」
「うん、いつも瑛瑠ちゃんと一緒に登校しているから。」
「空也は今日遅れるそうや。」
「そうなんだ。」
「まあ、昨日偉く真剣やったから疲れとんやろ?」
「えっ……。」
まさかの言葉に和希は言葉を無くす。
「空也シリアスとかマジ苦手やし、それにあないな子苦手やしね。」
「あ…ああ。」
昨日のあの子を思い出した和希は顔を引きつらせる。
「まあ、さっきも言ったけど、あんな子近づかせないから安心しいや。」
「ありがとう?」
「何故、疑問。」
「何となく…。」
「まあ、気持ちは分からなくもないけど、ここはちゃんと言って欲しかったな。」
「あはは、ありがとう、皆。」
「あーあ、今日の授業めんどいな~。」
「ん。」
「こっちなんて六時間目に英語小テストだよ。」
「えー、嘘やろ。」
「瑛瑠ちゃん忘れてたの?」
完全にいつもの日常に戻ったような気がして和希はふんわりと笑った。
たとえ、一時だけの穏やかな日常だとしても、ここは確かに和希の居場所だった。




