告白
「俺がいなければ、一兄は死ぬことがなかった。」
「……。」
「俺がいたから、あの人は死ぬことになったんだ。
全ては俺が――。」
ガツンと鈍い音が響いた。
「いい加減にしてくれませんか?」
和希はニッコリと微笑み、墓石を殴った手を振っていた。
「お前、何をやっているんだ。」
「どこぞの誰かさんの戯言を聞いて怒って、思わず墓石を殴ってしまいました。」
「……。」
絶句する冬牙に和希はニコニコと笑いながら彼に詰め寄る。
「俺がいなければ死ななかった?」
「……。」
「俺がいたから死んだ?」
「……。」
「貴方は何ですか?疫病神ですか?」
「似たような、ものだろう。」
「………………………………ふーん。」
目を逸らしそんな事を言うものだから、和希は冬牙を上から下までジトーと見てから低い声を出す。
「ほんっと、冬牙さんってバカですよね。」
「何だとっ。」
冬牙は鋭い目で和希を見るが、和希は冷笑を浮かべ応戦する。
「バカをバカと言って悪いですか?
ああ、違うんと言うんですか?
まあ、私には関係ありませんけど。」
馬鹿にしたように笑う和希に冬牙は眉を寄せる。
「人はいずれ死ぬ、それに抗える人なんていない。
その人が死んだのだって、その人の寿命なんですよ。」
「だが、あれは。」
「事故、殺人、天災、結局死んでしまえば原因は何だろうが、その人の寿命です。」
「……。」
「私はまだ、大切な人の死に立ち会った事はありません。」
一輝の時も、和希の時も、身内の死はまだなかったけれども、逆に他の人を遺す立場に立たされると思う。
自分を理由に必要以上に心を痛めて欲しくない。
死んで死者を惜しむのは当然のことだ、だけど、それにずっと縛られ続けるのは見ていて痛々しかった。
一輝も
和希も
そんな事を望んでいない。
冬牙が自分に縛られ、苦しんでいるのを見過ごせるはずがなかった。
「だけど――。」
冬牙は後々もこの時の和希の目を忘れる事が出来なくなる。
強くて。
優しくて。
壊すような。
癒すような。
そんな和希の目を彼は忘れる事が出来なかった。




