何とか、抑え込んだが、まだそれは終わっていなかった
「つ、疲れた…。」
和希はぐったりと机の上にへたばる。
あの後何とか三人を止め、無事に家に帰ってきた和希だったが、残りのライフポイントは尽きかけていた。
「もう、本当に……。」
何であそこまで冬牙に殺気を向けるのか本気で分からない和希は遠い目をする。
「本当に厄介だな…。」
一つは冬牙に殴り込む為に止めるために約束した三人娘との約束。
そして、もう一つは冬牙との約束した事だった。
「まさか、総合順位も二位だなんて……。」
「…ほお。」
「――っ!」
聞こえてきた低い声に和希はハッとなり、顔を上げると、そこにはうっすらと汗を掻いた冬牙の姿があった。
「い、つから…。」
「お前が総合二位と言ったところからだ。」
「……。」
へばっていたところを見られていなかったのは良かったはず。
そして、厄介だと聞かれなかったのもよかった。
でも、いっその事全て聞かれなかったらよかったのにと、和希は思ったが、聞かれたものはしょうがなかった。
「今回はどの教科も二位でした。」
「……何というか、逆にすごいな。」
背筋を伸ばし腹を括った和希の言葉に冬牙は呆れた顔をする。
「まあ、確かに、今回は英語で脚を引っ張ってしまって、失敗してしまったようですね。」
「そうか。」
「約束は約束です、どうぞ焼くなり煮るなり好きになさってください。」
正座し背筋を伸ばす和希はまるでそこに刀があれば切腹をする武士のような顔をしていた。
「……お前は腹を斬る武士か?」
「いえ、そんな事はないですよ?」
「……。」
冬牙はその顔で信用できるか、と言っていたが、和希はそれを突っ込むような事はしなかった。
「はあ、十五日予定を開けとけよ。」
「えっと、学校も丁度補習日だから大丈夫です。」
「そうか。」
この時、和希は分かっていなかった、十五日と言うその日が冬牙にとってどれだけ大事な日かを――。




