もう一回賭けをしよう
「なあ。」
「何ですか?」
「賭けをしないか?」
冬牙の言葉に和希の手が止まる。
「何ですか、急に。」
和希は再び、手を動かし、お茶を入れきる。
「私は特に何もないですよ、欲しいものも、してもらいたい事も。」
「俺はある。」
「……もしかしてですけど、連絡とかが面倒だから止めて欲しいとかですか?」
「違う。」
即座に否定され、和希は違うんだと呟きながら考える。
「無断で部屋を掃除するな?」
「違う、というか、お前、勝手に入ってやっているのか。」
「仕方ないじゃないですか、掃除している様子はないですし、ごみも出さないのが悪いんじゃないですか。」
「……。」
「嫌だったら、掃除してください、ごみ出してください。」
「……。」
和希はため息とともに、お茶を渡す。
「はい、冷たい麦茶です。」
「ああ。」
「で、賭けですか、私は構いませんけど、ただ、そちらの条件次第です。」
「……。」
「うーん、何でしょうね…あっ、ご飯の量は減らしませんよ。」
「違う、丁度いいから弄るな。」
「違いますか、洗濯物は私のと一緒に洗わず分けろ?」
「違う、お前、普通お前の方が嫌がるんじゃねぇか。」
「別に大丈夫ですよ、実家の時だって、父のパンツと一緒に洗っても平気ですし、別々で洗う時間がもったいないです、嫌だったら自分で洗ってください。」
「……。」
「本当に、出てこないけど、もしかして出て行って欲しい?」
「違う。」
冗談めかして和希が言えば、何故かきつめに否定された。
「じゃあ、何ですか?」
「……俺が賭けに勝てば、一緒に行って欲しい所がある。」
「別に構いませんけど?」
「賭けの内容はお前が一位を一つでも取ればお前の勝ち、取れなければ、俺の勝ち。」
「……何ともどちらに転ぶか分からない賭けですね。」
「駄目か?」
「別にいいですけど、というか、賭けにしなくてもいいんですよ?」
「いや、賭けだ。」
意地になっている冬牙に和希は首を傾げながらも了承した。




