夏子さんに電話をしました
「夏子さんですか?」
和希はリビングで夏子に電話をする、今日は冬牙の戻りが遅いと聞いているので、少しくらい長電話をしても大丈夫だと判断したのだ。
『あら、この間ぶりね。』
「はい。あの、お願いがあってお電話したのですけど。」
『何かしら?』
「実は桂子ちゃんのおじさんが別荘を貸してくれるという事で、私、紅葉ちゃん、瑛瑠ちゃん、桂子ちゃんの皆で海に行こうという話をしていたんですけど、未成年なので、引率としてご一緒していただけないかと言う話なんですけど。」
『光栄だけど、いいの?』
「はい、どうせ、母も紅葉ちゃんたちのお母さんたちも、私が居ればいいじゃないとか言って、引率する気ないんで。」
『ふふふ、確かに和希ちゃんが居れば大丈夫そうね。』
「……。」
和希は笑い事じゃないんだけど、と思っているが、突っ込むことはしない。
『分かったわ、日付が決まったらメールくれる?』
「はい。」
『あと、水着はこっちで用意してもいいかしら?』
「……。」
夏子の言葉に和希は嫌な予感がする。
「何でですか?」
『ちょっと、写真を撮らせてもらえればいいのよ。』
「……。」
『駄目かしら?』
「そちらは皆に聞いてからで。」
『あら、ガードが堅いわね。』
「……。」
『まあ、いいわ、和希ちゃんに任せたらノーと言われそうだから、こっちから他の子たちには声を掛けさせてもらうわ。』
「えっ、それズルいですよ。」
『いいじゃない、何ならバイト代も払うわよ。』
「……。」
和希は完全に負け戦じゃないかと心中で悪態をつく。
『あら、あの人が帰ってきたみたいね、悪いけど、切るわ。』
「あっ、すみません、忙しい時に。」
『大丈夫よ、料理なんてしないから。』
「……。」
和希はその一言できっと旦那さんが家事をしているのだと悟った。
『それじゃ、和希ちゃん。』
「はい、それでは夏子さん。」
夏子から二つ返事をいただけたのだが、どっと疲れた和希はソファに寝転がる。
「なんかどっと疲れちゃった。」
ため息を一つ零し、和希は天井を仰いだ。




