期末まで後…
「のおおおおおおおおおおおおおっ!」
「……。」
「……また、やってる。」
「風物詩ね。」
「和希ちゃああああん。」
期末の試験範囲の発表に瑛瑠が絶叫する中、三人はそれぞれの表情を浮かべながらお弁当をつつく。
「はいはい。」
苦笑する和希は自分の膝に引っ付く瑛瑠をなだめながらお弁当を食べる。
「瑛瑠ちゃん、学習、しない。」
呆れる紅葉は和希の膝に懐いている瑛瑠を睨む。
「そうそう、赤点取ったら、夏休み返上で補習らしいわよ。」
いつもと表情を変えない桂子はふと箸を止めるとそう言いだす。
「いややっ!」
青ざめた瑛瑠はまるで溺れているように和希にしがみ付く。
「夏は、イベントが盛りだくさんやのに。」
「イベント?」
「せや、腐女子には盛りだくさんのイベントが。」
「だったら、試験パスしないとね。」
「のおおおおおおおおおおおおおっ!」
再び絶叫する瑛瑠に紅葉と桂子は無視をする。
「まあまあ、瑛瑠ちゃん、試験までまた時間があるし、一緒に勉強しよう?」
「和希ちゃん、女神や。」
「ははは。」
瑛瑠の言葉に和希は苦笑する。
「あっ、そうだ、和希ちゃん、お父さんが今年海に行かないかと誘っといてと言われたの。」
「いいの?」
「ええ、あたし一人だと別荘でゲーム三昧だから、和希ちゃんたちを呼んで若者らしく満喫しなさいって。」
「その言い方だと、おじさんは。」
「仕事よ、送り迎えはするからって言ってくれたわ。」
「なら、皆で行きましょうか。」
「和希ちゃんならそう言ってくれると思った。」
「せやけど、女子だけだと面倒やない?」
「あー。」
昨年は受験生だったので、海は断念したが、その前の年はナンパによって紅葉は切れる。
そして、それを止めようとした和希が突き飛ばされて、運悪くガラス片で怪我をしてしまい、残りのメンバーも切れ、収拾がつかなくなってしまった。
「くぅ、とか男子メンバー呼ばへん?」
「夏子さんもいいじゃないかしら?未成年ばかりだと、あれだし。」
「あいつ、やだ。」
「あいつ?…ああ、叶谷さん?」
「……。」
嫌そうな顔をする紅葉に三人は首を傾げたが、すぐに、和希がピンときた。
「いい人だと思うんだけどな。」
最近、冬牙に色々と話しかけてくれているみたいで、冬牙は眉間にしわを寄せながらも本気で嫌がっていないようだった。
だから、和希は詩音がそんなに悪い人ではないのだと理解しているのだった。
「まあ、その辺はおいおい考えましょ、まずは期末よ。」
「うああああん。」
「和希ちゃん、教えて。」
「うん、勿論だよ。」
夏色に染まった空を見ながら和希は遠くで聞こえるセミの声に夏が来たのだと実感するのだった。




