幕間・彼女が去ってから
「それじゃ、和希ちゃん帰った事だし尋問しますか。」
「あかんで、それは…流石にな、和希ちゃんにばれたらあかんやろう?」
「ん。」
「お前ら本当に神崎の寿命を縮める気か?」
「そんな訳ある訳ないやろ。」
「それなら、落ち着けよ。」
「無理。」
「そうそう、この勘違い娘どうにかしないとね?」
三人の獰猛な笑みに空也は顔を引きつらせる。
「はぁ、んで、お前に聞きたいんだけど。」
「わたし?」
怪訝そうな顔をする自称ヒロインに空也は鋭い目をする。
「さっき、瑛瑠が名乗った時変な反応があったよな。」
「……。」
「どうせ、乙女ゲーム、つ―事は攻略キャラって多いよな?」
「まあ、少なくないわね。」
「誰?」
「……言わないといけない?」
「ああ、本当はよその男なんてお前に熨しつけて渡せるんだったらそれでいいんだが、残念ながら他人事じゃなさそうだからな。」
ゾッとするほど冷たい目をする空也に自称ヒロインは顔を真っ青にする。
「わ、わたしがこの物語のヒロインなのに。」
「人生は自分が主役なのに馬鹿言っているんじゃないわよ。」
「まあ、ええやん。」
「瑛瑠ちゃん、本当に、そう、思ってる?」
「自分や和希ちゃんたちに迷惑かけない限り、ええと思うよ?」
「成程。」
「納得ね。」
「お前らは黙っとけ。」
話が脱線しそうな三人を黙らせ、空也は自称ヒロインを睨む。
「んで?」
「わたしの覚えている限り攻略できるキャラクターは六人、一人はさっき言った冬牙様、そして、教師のはずの一輝ね。」
「後四人いるのか?」
「そうよ。」
「そいつらは?」
「一人は叶谷詩音、確か東雲剣術道場に通っているはずだけど?」
自称ヒロインはちらりと東雲をみた。
「紅葉ちゃん知っとる?」
「知らない。」
「はぁ?何よそれ。」
「わたし、やめた。」
「何よそれ。」
「合気道、和希ちゃん、一緒、楽しい。」
「また、あのモブ。」
自称ヒロインがそう言うと東雲はギロリと睨んだ。
「和希ちゃん、貶す、駄目。」
「東雲は落ち着け。」
「……。」
「他は?」
「和泉礼、南部桂子と同じ写真部のはずだけど?」
「部活入っていない。」
「何よそれ。」
「ゲームして忙しいからね。」
「……。」
「言っとくけど、こいつゲーマーだぞ、そんでもって、それは神崎に会う前からだから、あいつは全く関係ないからな。」
何かと神崎と話を繋げる自称ヒロインに向かって、空也はそう言った。
「後は?」
「須藤、空也ね、西瑛瑠は知っているんじゃない?幼馴染よね?最近疎遠でしょうけど?」
「……。」
「……。」
自称ヒロインの言葉に空也と瑛瑠は顔を見合わせる。
「空也の顔知らんの?」
「知っているわよ。」
「……えっと、彼の特徴は?」
「群青色の髪に、緑色の瞳よね?」
「そやな。」
「それがどうしたのよ。」
「そこにその特徴持った人おるんやけど?」
「……ま、まさか。」
自称ヒロインは空也の顔をマジマジと見て顔を引きつらせた。
「この腐男子が。」
「須藤空也だけど、なんか文句あるか?」
「嘘でしょっ!」
「……。」
ここまで全否定されたらさすがの空也もにこやかではいられない。
「嘘やないよ。」
「何でここまで話が違うのよっ!」
「知らないわよ。」
「ええ加減現実見たらどうやの?」
「ん。」
「お前が知っているのと大分違うならお前が思っているその「冬牙」という奴も違うんじゃないか?」
「止めて、止めてっ!」
耳を塞ぐ彼女に空也は鼻で笑う。
「本当におめでたい奴だな。」
「何ですって。」
「オレたちはゲームのキャラじゃねぇ、現実を見ろよ。」
「嘘よ、嘘よ…。」
ブツブツという女に空也は軽蔑の籠った目で見た。
「行こうぜ。」
「そうね、時間の無駄ね。」
「一つだけ言っとくわ、和希ちゃんはうちらと違って普通の子や、あんたの都合で巻き込むのは止めてくれる?」
「和希ちゃん、傷つける、殺す。」
「そう言う事だ、あんまり、調子に乗るなよ、くそ女。」
四人は屑を見るような目で自称ヒロインを一瞥して立ち去った。




