桂子の父
「………。」
「……お父さん…。」
門扉の前で仁王立ちしている桂子の父に和希は苦笑し、桂子は額に手を当てる。
「おお。」
「お久しぶりです、桂子ちゃんのお父さん。」
「ああ、久しぶりだな、和希ちゃん。」
優しい表情の桂子の父は冬牙を見た瞬間殺気立つ。
「桂子、この男は。」
「……。」
「あの、桂子ちゃんのお父さん、この人は私の――。」
「――っ!この優男がっ!」
和希が言おうとした瞬間、桂子の父は冬牙を殴りにかかる。
「えっ!」
和希は反射的に冬牙を守る為に彼らの間に立つ。
「和希ちゃん、どくんだ。」
「駄目です、どいたら殴りますよね?」
「……。」
黙り込む桂子の父に和希は顔を引きつらせる。
「この人は私のお母さんの友達の近所に住んでいた人です。」
「……つまり赤の他人じゃないか。」
「そうですね。」
口に出した時、和希は自分と冬牙の関係がかなり薄っぺらく感じて、何とも言えない顔をした。
「何でそんな奴が。」
「私を心配して送ってくれるんです。」
「……こんな男に君を守れるのか?」
「大丈夫ですよ。」
「……。」
桂子の父の鋭い目を受け和希は胸を張る。
「…おい、そこの若造、和希ちゃんに傷一つ負わせたら殺すからな。」
「……。」
「おい、小僧聞いているのかっ!」
桂子の父を無視する冬牙に和希は顔を引きつらせる。
「あの、時間も遅くなりますし、私たちはこの辺で。」
「……うむ…。」
どこか渋る桂子の父に和希は冬牙の手を取る。
「それじゃ、桂子ちゃんのお父さん、桂子ちゃん、またね。」
「ええ、また。」
「うむ…いや、送って。」
「いえ、大丈夫ですから。」
和希は桂子の父の誘いを断り、冬牙の手を引いて帰路につく。




