幕間・本番 紅葉 前編
「憂鬱。」
「もう、紅葉ちゃんもそう言わないの。」
「だって、あれ、苦手。」
「どうしてなのよ、あの連中の中で一番まともだと思うわよ?」
桂子はさらりとえげつないことを言うが不幸か幸いか彼女に注意する人はいなかった。
「苦手。」
「…ふーん。」
「あかーんっ!」
殴りこむようにやってきた瑛瑠に二人はギョッとする。
「どうしたのよ、瑛瑠ちゃん。」
「くぅのアホ、アホ、アホ、何であないにカッコいいんや、くぅの癖に…。」
「……。」
「……どうする、あれ。」
部屋の隅でぐちぐちと言っている瑛瑠に二人は困惑する。
「取り敢えず、放置しましょう。」
「了解。」
あの瑛瑠をどうすることもできないと判断した二人は互いに頷きあい、そして、無視をすることにした。
「あっ、せや、次の人どうぞって言ってはったよ。」
「……。」
「…紅葉ちゃん。」
「いや。」
「駄目よ、ほら、行きなさい。」
「和希ちゃん。」
「駄目よ、和希ちゃんはドレスを選んで着付けしてもらっているだから。」
「行きたくない。」
「それは皆一緒だから、ほら、行きなさい。」
白無垢をアレンジしたようなドレスを着た紅葉はしぶしぶ動き出す。
「本当にどうしてあそこまで嫌がるのかしら?」
残された桂子は呆れたようにため息を零した。




