到着したがひと悶着あるようです
「……で。」
「……て。」
「……!!!」
スタジオ部屋の前まで辿り着いた和希と冬牙は足を止めざるを得なかった。
「冬牙さんは少し待っていただけますか?」
「……。」
和希は中で聞こえた一つの声を拾い上げ、顔をこわばらせながらそう言う。
「お前。」
「もし、私が五分経っても声をかけなかったら、どこかに隠れていてください。」
「……。」
「では。」
まるで戦場に向かうかのように真剣な面持ちの和希は扉に手をかけた。
「なんで、冬牙様がいないのよっ!」
「……。」
やはりと、和希は表情をなくす。
「あっ。」
「……。」
「やべ。」
「マジか。」
男性陣はすぐに和希の登場に気付いたが、肝心の女性陣とそして、肝心の人物は和希の登場に気付かなかった。
「また、あのモブの陰謀なのっ!」
「……モブって私の事ですか?」
「えっ。」
「あっ。」
「和希ちゃん。」
氷よりも冷たい声音に三人娘は油の切れた機械人形のように音をたてながら首を和希に向ける。
「しくったわ。」
「あ、あかん、目が…。」
「血を、見る。」
「モブ、冬牙様はどこにいるのよ。」
「さあ、日向さんとは先ほど別れましたし、知りません。」
「嘘をおっしゃいっ!」
「……。」
「……。」
バチバチと火花を散らす二人にこの場にいる全員が手を出せなかった。




