片目の黒猫
私はバイトの帰り道、黒猫を見つけた。
その猫は、前からあの場所にいる。
決してあの周辺から離れようとしない。
その猫は、病気にかかったことがあるのか、片目だけ白内障になっていた。
今日もまた同じようにしていた。
だが、今日のそれは、誰かの帰りを待ってる様に見えた。
では一体誰の帰りを待ってるのか。
帰らぬ人となった主のことかな、と物語っぽく考えてみたりもしたが、やはり片目しか見えない、あの黒猫が待ってるのは、無くしたもうひとつの目なのだろう。
あの黄色がかった猫目と、目があった私は、しかしその猫を、電柱でも見るかの様な眼差しで、今日もそこを通り過ぎるのであった。