サマーデイ14後編その1
対戦相手の名前をみるなり、目を疑った。
中1というだけでも驚くのに、苗字が二人とも『山村』なのだ。
「えっ。」
思わず口に出してしまった。
同姓だと思うが、コトネのことが頭に浮かんだのだ。
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
竹原・中村ペアはW山村ペアに勝負を挑んだ。
一方コトネの方は、またも悲しい出来事が起きてしまった。
お父さんが帰って来ないのである。
しかも昨日の夜、父を訪ねて警察がやって来た。
心の中で、「何かあったのだろうか。」と、思いながら妹の夕食の支度をした。
次の日、ケイは悲しそうな顔をしながら朝食を食べた。
お母さんが、「何かあったの。」と、尋ねても返事が返って来ない。
反抗期だからなのだろうか。
何にせよ、昨日の夜からずっと不機嫌のようだ。
すると、お父さんが、
「山村コトネって子知っているか。おまえと同級生だと思うが。」と、話しかけてきた。
「知ってたらなんなの。」
冷たい口調でそう答えた。
「昨日、仕事で山村家に行ったんだ。妹さんの交通事故の件で聞きたいことがあったんだが、両親がいなくてな。」
「聞きたいことって何。」
先程とは打って変わって、すぐに返答が帰ってきた。
「実は、交通事故は意図的なものだったらしい。事故を見たって人が、後ろから狙うかのように妹さんをひき逃げしたらしんだ。本当かどうかわからないけど、現在犯人を探しているんだ。」
これを聞いた時、自分の体が無意識に動いたかのように学校のバッグをしょって学校に走っていった。
「知り合いだったのか。」
と、お父さんはつぶやき、ご飯を口にかきこんだ。
一時間目の終わりのチャイムがなった。
まだ五月だというのに、気温が28度近くあった。
ケイは、「昨日家に警察の人が来たと思う。」と、話しかけた。
第一声にしては、ずいぶんストレートに話しかけてしまった。
「何で知ってるの!?」
驚くように聞き返した。
「実は、その人、僕のお父さんだと思う。」
「確か名前は、『竹原ツヨシ』って人と、『飯田コウダイ』って人が来た。」
やっぱり思ったとおりだった。
「交通事故の件は聞いたと思う。心配しないで、ああみえてお父さんはベテランの刑事だから。」
「でも、まさか殺人だったなんて。」
コトネの目が、潤い始めた。
「おい、大丈夫かよ。」
少し戸惑ったが、すぐに普段の顔に戻った。
「あと、もう一つ聞いてもいい。」
「何。」
聞こうか迷ったが、言ってしまった。
「コトネって本当に3人姉妹だったのか。」
「うん。」
コトネは、自分の拳を握りしめながら答えた。
「そうか。」
聞かなかった方が良かったかもしれないが、後悔はしていなかった。
このままある程度月日がたった。
夏休みに入る前、ケイはお父さんから衝撃の事実を聞かされた。
「実は、コトネちゃんの母親は浮気をしてたんだってよ。」
「え。」
耳を疑った。
「犯人の目星も動機もだんだんわかってきたんだ。」
と、自慢そうに答えた。
「コトネのお父さんか。」
まだ機嫌が悪いのか、低いトーンで答えた。
「おお、さすが俺の息子だ。」
お父さんは、とても機嫌がいいようだ。
しかし、ケイの機嫌はますます悪くなる一方だった。
「マジかよ。」と、独り言のように小さな声で叫んだ。この事実をコトネに言ってしまっても良いのだろうか。
今まで友達がいなかったケイが、初めて他人のことで悩んだのだった。
夏休みに入った頃、ケイのスマホに一通の電話がきた。
番号を知らなかったのだが、でてみることにした。
「もしもし。」
「もしもしケイ君。話があるから近くの公園にきて。」
まるで急いでいるかのように話しかけた。
ケイはそもそも自分の電話番号をどこで知ったのかが気になった。
「う、うん。」
ケイは急いで身仕度をして、公園へと走って行った。
「おーい。」
コトネは、汗だくのケイに向かって叫んだ。
見ると、もう一人男の子か女の子かわからないような子がコトネの近くにいた。
「紹介するよ。小学校の頃の友達で、今は別の中学に通っている『平松タカヒロ君だよ。』」
ああ、男の子だったのか、とケイは心の中で思った。
「大事な話って何。」と、コトネに尋ねた。
「うん。実は、ハルカがひかれた現場をタカヒロ君が見たって言うんだ。ケイ君のお父さん警察官っていうし、一応聞いてもらおうかなっと思って。」
なんだか、コトネが明るくなったように感じられた。
「じゃあ、暑いし早く話してくれるかな。」
「まず、僕が現場を見たのは夕方ぐらいだったかな。その時は、おつかいの帰り道で急に女の子の悲鳴がしたんだ。振り向くと女の子が一人倒れていて、周りの人がざわついていたよ。
それから救急車が10分後ぐらいに来て、病院に運ばれて行ったよ。
大事なのはここから。
僕、偶然くるまの中の人を見たんだ。」
「えっ。本当に?」
コトネが驚くように言った。
「うん。たしか、男の人でサングラスをかけていたかな。」
「男の人。」
またも驚くように言ったが、ケイは、「やっぱりな。」という顔をした。
「そのあと、僕はその人について行こうとしたら、近くにあるマンションに入って行ったんだ。
5分ぐらい待ったら、犯人だけが出てきて誰かと携帯で話をしていたんだ。なんか、浮気がどうたらこうたら・・・。」
ケイは急に嫌な感じがした。
このまま聞いているとまずいことになると思い、コトネの腕を掴んで公園から立ち去った。
「あれ。・・・。」
タカヒロ君には悪いと思ったが、ここは一旦落ち着かなければ、と思ったのだ。
「どうしたの。」と、コトネに問われた。
ここは勇気を振り絞って本当のことを言うべきだ、と覚悟を決めた。
「おい、コトネ。実はだな・・・。」
ちょうどその時、タカヒロが追いかけて来た。
やばいと思い、ケイはそのまま家に帰ってしまった。
なので、このあとタカヒロは話続けたかはわからなかった。




