表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

バンドやろうぜ ③



「君、バンドやってるんだってね」


「ええ、ギターをしています」


「私、ボーカルしてあげよっか?」




 バンドマンなら何度か聞かされるセリフである

 本当に人手がなくお願いすることもあるが

 基本は黙って苦笑いである



「私、バンドやってたんですよ」


「パートは?」


「ボーカルです」


「楽器は?」


「出来ません」



 こういう会話も何度聞かされたことか

 世界中のバンドマンを代表して本音を言わせてもらうと

 正直うんざりである


 私はボーカル

 具体的には自称ボーカリストが大っ嫌いだ


 私は全てのバンドマンを愛しリスペクトする

 どんなに下手でも練習不足でも

 彼らは身銭を削って機材を購入・維持し

 努力し勉強し試行錯誤し創意工夫して来たはずだ


 あるいはそうありたいと願ったはずだ

 努力し、苦労し、頑張ってでも楽器が出来るようになりたいと

 早々に挫折したとしても、細々と続けたとしても

 同じ方向を見つめ憧れた同士だ、仲間だ


 だが自称ボーカリスト、貴様はどうなんだ

 バンドマンの努力と苦労と蓄積した知識と経験を踏み台に

 自分は楽してチヤホヤされたいだけちゃうんか


  私は歌がうまい?


 自分が思い込んでるだけじゃないのか?

 それに上手いやつなんてどこにでもゴロゴロおるわ


  私は努力している?


 それを他のバンドマンに胸張って言える自信はあるか?

 ギタリストやドラマーの平均的な練習量知ってて言えるのか?

 ベース「わいもやで」

 キーボード「わいも」


  生まれつき歌がうまい?


 自分が思い込んでる(以下略

 あと、生まれつきがどうとか言ってて恥ずかしくない?


  絶対音感?


 でた (笑)

 これバンドマン的には自称霊感がある人くらい痛く恥ずかしい

 それがどないしてん

 あったらなんやねん

 役にも立たんしょーもないマウント取ってくるな



 私は、バンドがやりたかった

 正直、パート (楽器) はなんでもよかった


 だからジャンルもパートも選り好みせずなんでもやった

 だから腕のないバンドマンでもいてくれるだけで嬉しかった

 だけど、どのバンドでもボーカルは酷い人しかいなかった


 自称・作詞家も酷かった

 ていうか話にならん


 他人様の仲良しグループが集まって組んだバンドなら文句は無いが

 私が関わるバンドでは耐えがたい

 なら私が自分で何とかするしかない

 

 私は人から上手いと言われたいわけでもない

 チヤホヤされたいわけでもない

 バンドを続けたいだけ


 汚い、変だ、耳障り、と評価されても構わないから

 絶対真似できない突出した個性

 爆音のスタジオやライブハウスでも通る声

 耳に刺し

 脳に刻み

 印象に残す

 これがボーカルという「楽器」の役割だと私は疑わない


 そうやって何年も練り上げ200x年の時点での記録が

 前回投稿した音源である


 歌詞や楽曲も印象に残ることだけを追求している

 冒頭から耳に残るように

 同じフレーズをしつこく繰り返し

 徹底してシンプル、そして短く

 絶対真似できない個性で


 誰にでも出せる声で音に合わせて指示通り歌い

 後は虚勢をはるだけのボーカリストなんて

 死んでもお断りだ


 独特なセンスは滲み出てしまったものの

 あの音源は当時の自分なりに

 徹底した冷徹な計算の上で作られている



◇◇◇



 録音機材を手に入れてから曲作りに専念した

 ライブも自主的にはやらなくなり、生活に余裕もできてきた


 楽曲もネットに投稿するようになった

 ストレートで忖度のない罵声と称賛を浴びながら

 的確なアドバイスも頂けるようになり

 録音の技術が上がっていった

 私も専門誌を買い漁るようになり

 ミキシングを学んでいった


 余談だが当時の DTM MAGAZINE は何の役にも立たなかった

 業界人インタビューとか

 抽象的な DTM の話しか載っていない


 ギター練習用にギター・マガジンを買うようなものだ

 それなら YOUNG GUITAR のほうがいい


 そして Sound & Recording

 待っていた……オマエみたいな雑誌を…… (殺し屋1)

 役に立ちすぎてバックナンバーを買い漁った


 この時期に同人CDを作った

 予想外に売れた


 ネットに投稿した新作音源のアクセスも伸びる

 日本全国から感想やイベントお誘いの声がかかり出した


 FM放送局から出演オファーが来た時は

 嬉しすぎて全裸で繁華街を駆けまわり……そうになった

 本当にやってたら今頃前科二犯だ


 海外からも注目されるようになって

 某ジャンルのバンド紹介サイトに掲載された

 そして中国でバズったらしく

 サーバーから警告されるくらいアクセスが急増した


 私は幸せの絶頂にいた



◇◇◇



 私が嫌っていた (今も嫌いだが) ボーカルというパートが

 結果として私の専門パートになってしまったわけだが

 そんな私でも、絶賛できるボーカリストは確かにいた


 ただ、彼らは全員努力していたし勉強していたし

 練習も欠かさない


 マイクスタンドをステージ上で振り回す

 パフォーマンスの練習を欠かさない達人もいた

 そりゃステージ映えするわけだよ……


 ただ共通して言えるのは、彼らは楽器もそこそこできる


 彼らの中には後に

 NHKの紅白に出場した人や

 某国民的アニメ主題歌の歌詞を手掛けた人もいた

 私は知人として誇らしくも

 嫉妬に悶えている


 そして、運なく光が当たらなかった真のボーカリストたちよ

 私は忘れない、君の努力を、頑張りを

 私もその一人、望みまでは届かなかった

 だが今でも胸を張って言える


 私の本職、専門パートはボーカルです

 好きではありませんがね


(でも普段は隠してて主にベーシストを自称しています)



◇◇◇



 さて次回より、バンドやろうぜ、本編スタートである

 上手くいきはじめた私のバンド、そのメンバーたち


 私に殺意を抱かせた初代ギタリストAくん

 私に殺意を抱かせた二代目ギタリストBくん


 そして最高に恥ずかしい長文メールを送ったTくんの物語である


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ