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ゲームセンター狂騒曲 【番外編】


 リクエストがあったので、今回は【番外編】

「どうやってゲーセンを盛り上げ客を増やしたか」

 について語ります


 そもそも、なぜ作中で語らなかったのか

 ていうか、なぜ内心は語りたくて仕方なかったのか


「異世界転生で俺チート」

「またオレ何かやっちゃいました?」


 なろう系テンプレをリアルで味わった体験談になってしまうからだ


 個人的には「なろう系テンプレ」は嫌いじゃない

 曲がりなりにも私自身が実際なろうに作品を投稿している身だし

 そもそも貴族令嬢を自称している時点でお察しである

 厳しい現実社会でなんとか生きている者の一人として

 愉快痛快な快進撃を繰り広げる「なろう系テンプレ」に癒されるのです


 アンチの気持ちもわかるのです

 残酷でシリアスなストーリーは私も好みます

 とはいえ、その手の話は創作よりノンフィクションが突出しており

 「文化大革命」「スターリンの粛清」「アステカ文明」「パラグアイ戦争」

 などなど例を挙げるとキリがありません


 でもねッ!


 実体験でねッ!


 なろう系テンプレを味わっちゃうとねッ!


 ちょーーーーーーーーーーーーーーー気持ちいいんだからッッ!



 麻薬?


 感度3000倍? (対魔忍)


 そんなもん、足元にも及ばなくってよッッッ!


 オーホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ!




 ……とはいえ、特別何かをしたというわけじゃない

 そもそも私にチート能力はない

 普通の会社に勤めていた浅いオタクの貴族令嬢が (そこは言い張る)

 反社の経営する時代錯誤のゲーセンに異世界転生し無双しただけのことである


 ただそれは私の人生で

 最も輝かしい瞬間のひとつでもあったことは間違いない



◇◇◇



 KOFや餓狼伝説、ストゼロ (酒ではない) やストIIX

 いわゆる対戦格闘ゲームが全盛の時代である


 そういったゲーム基板のチョイスは

 意外なことに店長は外さなかった

 実は前述のとおり、私も詳しい方ではないし

 新作がヒットするかどうかは稼働するまでわからない


 業務用ゲーム基板は高額なのだ

 10万から30万くらいする

 1プレイ50円で元取れると思う?


 そう、実はゲーセン、案外もうからないのだ

 店長、実は必死で金持ちを演じていただけなのだ


 だから店長がとっていた戦略は

 絶対黒字になるゲーム基板だけ購入

 他は中古かレンタルというシンプルなもの

 そしてこれは、全くもって正しかった


 私もそれに従った



◇◇◇



 しかしこの店、景品が酷かった


 UFOキャッチャーは意味不明なぬいぐるみ

 クレーンゲームはカプセルに入った悪趣味なライター


 ポスターが景品のルーレットゲームもあった

 しかし今どき「同級生」かよ……


 景品の発注を任されたので、全て入れ替えた

 ついでに店内も徹底的に清掃した

 ていうかサボると怖いから、働いてるふりしてたら綺麗になった



 UFOキャッチャーの景品を「ときめきメモリアル」のグッズに変更

 インカム (売り上げ)、爆増


 クレーンゲームは薄汚かったので可能な限り綺麗に飾り

 カプセルを廃止して少数を高級ライター風に配置

 ライターなんてクレーンで直接掴みにくく取れないのだが

 逆に射幸心を煽ったらしく、売り上げがエゲツナイことに……


 ポスターのルーレット

 「同級生」から「エヴァンゲリオン」に変更

 当時はちょうど劇場版が公開された頃で

 入荷即日完売の繰り返し



「黒い安息日、今日はお寿司食べに行こか」



 奥さんが声をかけてきた

 店長も頻繁に奢ってくれるのだが

 正直奥さんは苦手だった

 ていうか嫌だった

 しかし断ることなんて出来ない



「は、はい、ありがとうございます」


「なんでも頼みや、奢るから」


「は、はい、では玉子の握りを……」



 なぜ玉子の握りなのか?

 理由がある

 それは奥さんより高級なモノを注文すると

 後で何を言われるか……



 翌日。



 私が朝、ゲーセンに出勤すると

 バックヤードに可愛らしい封筒に入った手紙が置かれていた

 奥さんが書いたものだ

 私は深いため息とともに、それを読んだ



────黒い安息日へ


    私が昨日お寿司屋で

    海老の握りばかりを食べていた理由がわかりますか

    それはアナタが貧乏臭く玉子の握りばかり頼み

    私に恥をかかせたからです

    もう二度と

    アナタを食事に誘うことはありませんが

    これからは常識というものを(以下略




 はぁ……


 だから嫌なんだよ……


 これで何度目だよ……


 毎回何か理由を付けて厭味ったらしい長文の手紙を書いてきやがる……



 ……これが日常、当時の私のルーティーンである

 これは後の時代だとブログ

 今だとTwitter、あ、いやいや、Xにお気持ち表明なんだろうな

 ちなみに店長との食事も作法には厳しく気を使うのだが

 勉強にもなるし奥さんほど嫌では無かった


 (とはいえ楽しかったとは言わないところがポイント)



◇◇◇



 では最後に、人生で一番輝いた瞬間を語らせてください



 長くなるので書きませんでしたが

 私はトーナメント制ゲーム大会を頻繁に開催したり

 その他色々手を尽くして客層をゲーマー一色に染めていきました

 お陰様で県外からも遠征に来られる方が現れるくらい

 大盛り上がりのゲームセンターになっていました


 そんなある日


 多くのゲーマーが待望していたゲームの新作リリースが発表されました

 ぶっちゃけるとSNKのKOFです

 当店は手段を尽くして最速で入手することに成功しました

 (その方法はまた別の機会にでも)


 私は、いやここはあえて店長の英断で、と言わせてください

 世界最速の入荷を目指したのです


 特別な方法によって得た先行入荷の当日

 私はSNKの本社、大阪の江坂にいました

 その受付で、工場よりゲーム基板が届くのを待ちました

 やがて基板は届き

 その場で受け取り

 新幹線で店へ戻り、裏口から扉を開けました


 ぎっしり

 お店にはお客さんが、ぎっしり


 ○月○日、KOF新作入荷、と事前に手書きポスターで告知はしていたのですが

 よもや、ここまでお客さんが来るとは……


 10人?

 50人?


 いやいやいや

 数えてないけど、訳わからんくらいお客さんが来ていました

 コスプレイヤーもいます

 そんな打ち合わせはしていないので、野良のコスプレイヤーです

 当時としては、めちゃくちゃ珍しい話です

 なぜかナコルルとリムルルもいますがSNKだから問題なし

 いや別にカプコンでも全然いいですけど


 店内に満ちる期待と興奮


 私は即、基板の取り付けにかかります

 とはいえSNKはカートリッジ差し込むだけなので簡単ですけど


 しかし私は、わざと時間をかけました


 ゲームのオープニング画面をお客さんに見せたかったからです

 稼働させると殺到して、そんなもの見れなくなるでしょうから



 モニターに流れるアニメーション

 謎の新キャラ

 意味ありげなカッコいいキメポーズ

 勇ましいBGM

 そして、それっぽい発音のタイトルコール


 この瞬間

 この瞬間


 そこにいた誰もが

 

 同じ気持ち

 同じ興奮


 誰に何と言われようが、この瞬間の高揚感を味わえたことが

 私の……


 ……いや、言葉に出来ないわ



◇◇◇



 とりあえず「栄光なき知人たち」の

 ゲームセンター狂騒曲 【番外編】は終わりです


 人生で最も辛く、そして楽しかった時代の話を

 書いて記録することが出来て本当に幸せです

 ありがとう



2026/02/11 追記


「かぐつち・マナぱ」さんから素敵なAIイラストを頂きました

 ありがとうございます

 こちらにて掲載させて下さい


挿絵(By みてみん)


 ご存じない方もおられるかもなのでご説明いたしますが

 この金髪ツインテールの貴族令嬢こそ

 私、黒い安息日でございます

 ゆめゆめ疑うことなかれ


 それはそうと、この技……明らかに「炎のコマ」


 コロコロ連載当時からすでに

 キッズたちの間で


「別に手から火が出てもゲームに関係なくね?」

「そんな高速でレバー動かしても自機ついていかねえよな?」

「そもそも弾は画面に一発しか出せなくね?」


 などとツッコまれまくっていたわけだが

 近所に嘘つきがいて


「俺、ちょっとだけ火が出たことあるけどな」


 と言っていたのを今でも忘れない

 ……と、爺やが申しておりましてよ、ホーホホホ!


◇◇◇


 ていうか、こういうゲームマンガって

 対戦格闘ブームの時こそ流行りそうなものなのに

 案外なかったよね?


 ゲームキャラクターを掘り下げる系は充実してたけどね

 ていうか充実どころか同人誌とかで出まくってたよね

 懐かしいなあ……


 ……あ、いや、その、爺やがそう申しておりました


 同人で思い出しましたが

 実は私、黒い安息日も同人を作ったことがあります

 とはいえ同人誌ではありません

 同人CDです

 音楽系です

 アルバムを作って、とらやメロンに委託していました


 確か……記憶も定かじゃないんだけど

 とらの委託は一定の時期が来たら返品されたと思う

 んで、メロンなんだけど……


 ……なんと、今だ入金されてる!


 つまり買ってくれてる人がまだいるんですよ!

 超大昔に作った作品なのに今も手にしてくれる人がいる嬉しさ


 感謝しかないです、ホント

 愛しています、買ってくれた人、そしてメロンブックス!


 お金がどうとかじゃないです

 当時なりにがんばった作品を

 今だ手にしてくれる人が存在すること

 それが嬉しいのです


 いつか「なろう」で書いた作品も

 何年か先

 何なら私がこの世からいなくなった後でもいい

 誰かが読んで、面白いと思ってもらえたら幸せです

 そうありたいです


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― 新着の感想 ―
普通では体験できないことを語っていただき、ありがとうございます!仕事柄いろんな方と接する機会がありますが、(*人´ω`*)<ある特定の方の共通点が「なめられた」という価値観であることを認識できて、大変…
ありがとん♪ あー、ちょっと言葉にならぬ  リクエストしてよかった  本当によかった  ありがとう ゲーセンの女神様 本当にありがとう
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