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バンドやろうぜ ⑦【黒い安息日の古い音源含む】


 バンド内で「いけないもの」が流行った


 人目に触れるわけにはいかないので

 スタジオ内で取引していた

 ここなら安心だろう


 私とTくん、Bくんの三人は、カバンからブツを取り出し

 交換したり、融通したりしていた


 運悪くカルロスに見られた

 ヤバい

 誤魔化さないと……



「ヘイ、ソレハナンダ、俺ニ見セロ」



 私は片言の英語で嘘を吐く



「おぅ……いっつあサムライムービー……」



 カルロスは反論する



「ノー、ユーアーライヤー、俺ハ見タ、18禁テ書イテタ」



 ちっ……

 読めるのかよ……

 余計な日本語知識もってやがる……


 このとき私がカバンに隠したブツは「君が望む永遠」

 Tくんのカバンには「To Heart 2」が隠されていた


 時代は2000年代、エロゲー全盛期である

 反社に「任侠」があるように

 オタクには「萌え」があった

 ともに社会から逸脱した集団の精神的支柱である


 この話だけで一本書けるが、長くなるので割愛

 バンドに関わる重要なことだけ語らせて頂くと

 

 「オタクカルチャーを本格的なヘヴィメタルで表現」


 というのが私の固執するバンドとしてのアイデンティティだった

 冷徹なビジネス戦略ともいえる

 現代では珍しくない方向性だとは思うが

 当時は他に見当たらなかった


 軽く匂わせるバンドは少数あった

 萌えを表現するバンドもあったにちがいない


 だが「オタク文化」をテーマに

 「本格的なヘヴィメタル」で長く活動するバンドは

 場合によっては世界初、そして当時は世界唯一だったと思う

 私はそれを今でも誇る


 とはいえ当時はバンド内でも風当たりが強く

 もっと普通の歌詞で曲作れと散々責められた

 故に私はバンド内で洗脳を開始

 名作エロゲーをバンド内で流通させ、メンバーを沼に落としていった


 ちなみにTくんは元々そっちの人間なので、嬉々として協力

 役立たずだったゲーセン時代とは違い

 現在は重要な悪の……いや、萌えの手ごまである


 私とTくん、マブラブを同時購入し

 同じペースで話を進め

 同じ時期に鬱になったのは楽しいトラウマである


 余談だが、私はニトロプラスと age のフアン


 Tくんはフロントウィングやきゃんでぃそふと

 そして桃井はるこやKOTOKO (I've) などこの手の音楽に造詣が深い


 Bくんは何でも満遍なくといった感じ


 Sは興味がないというか、洋ゲーのMORPGにハマっていた

 某アジア近隣国のプレイヤーとガチでケンカするため

 その言語を完全に習得するなどレベルの違う狂気を見せていた



 (注:スタジオでの会話は当時の完全再現です)



◇◇◇



 カルロスはとにかく元気な男だった

 喋りだと止まらないし、遠慮など一切しない

 昼夜問わず電話して来て遊びに誘う

 そしてわがまま放題、思い込みと決めつけが酷い


 だが、いや、だからこそ私と相性が良かった


 まず私もめちゃくちゃ喋る

 「なろう」での投稿ペースと文章量でおわかりだろう

 カルロスの誘いはいつでも受けた

 だってこいつ、めちゃくちゃ面白いんだもん

 特に彼の思い込みと決めつけを崩すことが



「カルロス、今日はいっしょにラーメンを食べますわよ、ホーホホホ!」


「らーめん?オウ、Chinese style のすーぷぱすた? ノー、Yucky (ヤッキー:不味い)」


「まあまあ、そういわず参りましょう (ニヤリ) 」



 (数十分後)



「ナニコレ! 超オイシイ! オオ、知ラナカッタ!」


「でしょでしょ」


「イェー! マンチィ―ーーーーーーーーー!」


「路上で叫ぶな、あとマンチは止めろ、マジで」



 毎回こんな感じで食事に連れて行く、嫌がる、食べる、絶叫する

 このルーティンが繰り返される

 カルロス自身も楽しかっただろうが

 そんな彼を見ている私はもっと楽しかった



◇◇◇



 そんなある日、カルロスが私を自宅に招待した

 彼の両親も私を歓迎してくれるとのこと

 両親……だと?


 カルロスの父は世界中を股にかけ活躍するサッカー関係者

 私はサッカーにうといので詳しくは分からないが

 確かこの頃のワールドカップ日本代表のコーチだったと記憶している

 監督や選手ではない、なお、コーチがどのような役割かもわからない

 (J1チームの監督はやってたかもしれない)

 無知で申し訳ない、恥じています


 そんなセレブ中のセレブがですよ

 息子が世話になったっつうて

 家に呼んでくれるわけよ

 めっっっちゃ面白そうじゃん!

 なかなか体験出来ることじゃないぜ!


 私はウッキウキでカルロスの家に向かった





 この頃カルロスは日本語70%、英語30%、の割合で会話していた

 ぶっちゃけ日本語だけでも日常生活は困らないレベル

 もともと母国で日本のアニメはめっちゃ見ていたらしく

 ある程度は話せていたらしい

 海外で日本アニメが人気って、都市伝説じゃなかったんだ……


 なお、カルロスが気に入っている日本語は


「カカッテコイ、カカロット」

「地獄二、落チテクダサイ」


 である

 理由は知らん。


 カルロスの家はマンションだった

 家賃8万前後かな……

 共用部は普通で内装はまあまあ広いが

 築年数は結構経ってた感じ


 ……セレブ?


 ご両親は私を歓迎してくれた

 お父さんは英語と少しの日本語が話せるが

 お母さんはポルトガル語とドイツ語・イタリア語だけ


 想像していたセレブ感はなかった

 でも海外ドラマの登場人物になった気分だった

 カルロスも家では普通の子どもだった

 幸せで質素で素朴な家庭、美しい……



 ……私は泣きそうだった



 食事が出た

 カルロスのお母さんの手造りだが

 普段彼をビビらせていた私の立場が逆転した


 まずお皿にスープ


 その上にお米がドン!


 ……普通逆じゃね?そう思ったが

 食事中の飲み物としてスパークリング紅茶

 な ん や こ れ ?


 ぱく。

 もぐもぐもぐ……

 美味い……

 美味い……だけじゃない……


 ……わかる

 ……感じる


 センスのない例えをすれば……

 カルロスの母国料理は……夕日?

 私に何が欠けているのか

 私は何に飢えているのか

 寂しさに震え泣くこともできない

 そんな気持ち、サウダージ (切なさ・哀愁)


https://www.youtube.com/watch?v=BB4abVuAo1A

(ブラジル音楽、ナナ・カイミとセザル・カマルゴ・マリアーノのアルバム)


 美味しい

 だが、それだけじゃない

 いや、そういうことじゃない

 言語化し、ここに書く事なんて出来ない


 あとコーヒー、ヤバいくらい美味い

 ただし子ども向きではない

 だが美味い

 ちなみに私はブラックでは絶対飲まない


 後に何度もカルロスの母国料理を提供する店に行った

 美味しい

 大好きだ

 だが、あの日カルロスの家族に振舞われた料理には

 愛情などという浅い言葉で表現できない感傷がある


 私は知らない

 だけど懐かしい

 そんな気持ち

 あえて言うなら、優しい絶望、夕方の墓地

 孤独の約束……


◇◇◇



 ちなみに私は高卒で

 大学に行ける家庭環境では無かった

 それに家にも入れなかったので勉強などしたことがない

 ノートも書いたこともない……本当ですよ


 そんな私でも英語は話せました

 ていうか中学時代

 家でも学校でも勉強させてもらえなかったので

 とりあえず教科書を丸暗記しました

 いまでもNEW HORIZONの冒頭数ページは暗唱できます


 そんな私でも

 カルロスと知り合って一か月後には英語が話せてました

 私すごいでしょ、とかいうしょーもない話じゃなくて


 日本人なら誰でも中学で学んだ英語の知識が少しでもあれば

 一か月くらいで自分が外人になったのかと思えるくらい

 勝手に喋れるようになります、マジで


 嘘だと思うかもしれませんが

 これを読んでる経験者は今うんうんと頷いていると思うし

 未経験の方は念頭に置いておいてください、きっと役に立つはずです



 では、いよいよ最終回も近づいてまいりました


 次回、大きなイベントが

 そしてTくんがやらかし伝説の長文メールが炸裂


 ご期待ください!



カルロスが弾いたベースの音源が見つからない

古いフォルダーを漁って探していたら

こんなのを見つけました


https://www.youtube.com/watch?v=l_5kafrt_3U

(著作権の問題でYouTubeに投稿しました)


これは機材を買ってすぐの頃

とりあえず試しに私が録音してみた音源

データを確認したら2006年とありますが

実際はもっと以前のはずです

だって最初期の音源ですから


ビートルズのイエスタデイを

ベースでコード弾きの一発録り


録音当時は人に聞かせる気はなかったはずですが

20年越しにネットの海に放流してやるわ、ホーホホホ!


ちなみになんで自分の音源を本作で晒しているかというと

私の話を証明するためです

身バレしない音源を厳選して晒しています


このイエスタデイのベースは録音テストなので

いい加減に弾いていますが (最後音外してるw)

2000年初頭でもこの程度は弾けていたと証明したいだけです

我ながら鼻で笑っちゃう雑な演奏ですが……


これらの音源を聞いた上で私の物語が信じられず

作中のような活躍はしてなかっただろうと思ったなら

それは全然かまいません

むしろ、それくらい人を信じないほうが現代を生きるにふさわしい


それに私は信じてもらうことより

作品としての面白さを重視したい

ただ、実話が面白過ぎて嘘が書けなくなっているにすぎません


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