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7 転回

 依頼人──もとい狩人に襲撃された翌日。なつと波岩の二人は事務所に佇んでいた。


 二人はテーブルを挟んで互いに対面して座っていると、「これからどうする?」と波岩が話し始めた。なつは組んでいた膝を解いて話した。


 「まず、光昭という男性がなぜ失踪したのかを探り、その後にあの女性……エリがなぜ光昭を捜しているのかを考える。──まあ、ほぼ私の中では事件の顛末は分かってるけど」

 「本当なのか? それは」


 と焦り気味に波岩は話す。が、身を乗り出している彼を宥めるかのように、なつは「まあまあ」と掌を見せた。


 「そうは焦らない方が良いよ、ワトソン君。まだ仮説の段階なんだから」


 某世界的に有名な探偵のように話すなつ。その様子を見ながら、波岩は「はいはい」と椅子に深く座った。


 「〝仮説は実証されて初めて真実となる。が、証拠がなければそれは只の推測で仮説だ。〝ですよね」

 「分かればよろしいのじゃ」

 「分かってます。……ただ、その台詞って誰から教われたんですか」

 「……さぁな」


 目線を上の空に向けたなつを見て、波岩は嘆息を漏らす。


 ──いつもこうなのだ。自分から仮説を示さない──というより、証拠が集まらなければ仮説は仮説で、推測だから話さない。この点について僕は同意できるが、なつは自分から自身の過去について話したがらないし、もし問い質そうとしても……殺される。その点について、僕は未だ彼女に同意をしていない。


 一度波岩はなつに〝探偵をしている理由〟について問うたことがある──。が、彼の問いに彼女は答えることなく、それどころか、自分の過去に触れる者が居たらその時はその時で殺す──と明言をしている。


 「言っただろ。私の過去について知ろうとする人は一人残らず殺すって。それが分かったら私の事を詮索するのは止めた方が良いぞ」


 と言い、彼女は椅子から立ち上がり後ろの窓に身体を向けた。その彼女の口調に波岩は「……やめておきますよ」とだけしか答えなかった。無論それは──一度だけ彼女の過去を詮索しようとした、あの時の経験が脳裏に浮かび上がったからでもあった。


 あの表情だけは、見たくない。波岩はそう思って、ただなつの背中を見続けた。


 暫し沈黙が降りる。時計の針が十一時を指そうとした途端、事務所のドアが開いて鈴の音が事務所に響かせる。なつと波岩の二人はドアに視線を向けると、そこにはショートカットで茶髪の髪型をした鳴田夕海の姿が立っていた。華奢な体つきをした彼女は一度頭を下げた後、大股で座っている波岩の傍に移動した。


 「どうしたんだ? そんな畏まって」

 そう言いながら、なつは再びソファに腰をかける。その動作を見ながら、夕海は「少しだけ捜査に進展があったんです」と話した。


 「進展?」と波岩。

 「はい。光昭の所在が分かりました」

 「それは本当か⁉」


 なつが身を乗り出して夕海に訊く。が、真剣な面持ちになって「いいえそれが──」と首を振りはじめた。その様子に察した波岩が「まさか」と言いかける。


 「──はい。光昭さんは今朝、屍体で発見されました」

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