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59 事後

 「結局のところ、事件はこれで終わりということですね」

 美桜と夕海の報告を受け、波岩がそう言うと、彼女らはなぜか表情を曇らせていた。


 「……まあ、気持ちは分からなくもないですけど」

 同情するかのように波岩が言う。その言葉に反応するように、美桜が波岩に視線を向けた。


 「友井靖子──被疑者死亡のまま逮捕出来ず、書類送検のみとなったのは非常に残念でした。大久保什日も後日、逮捕状を取って逮捕を予定していましたが──」

 「……取り逃がした、と?」


 目を瞑り、腕を組んだままなつが呟く。その彼女の様子に視線を向けて、夕海が「……ええ」と俯いた。


 「なぜ大久保什日が逃走したかは分かりません。ただ、今私たち警察が必死になって……」

 「それは聞いてない」


 なつが夕海の話を遮る。その口調に若干苛立ちの感情が込められているような気がしたと、波岩は思っていた。


 「大事なのは、大久保が逮捕されなかったか、逮捕されたか──それだけだ。それ以外に警察が取り逃がしただの──大久保が逃げただの──、そんなの、私には関係ねぇ」

 そう言い、なつはスッと立ち上がった。


 その様子を一瞥した後、美桜は「では報告も済んだところで──」と立ち上がる。それと同時に夕海もまたスッと立ち上がった。


 「ではまた、どこかで」

 と言い、彼女らは事務所を後にした。


 波岩は事務所の扉が閉まるのを見た後、窓で景色を眺めている羽賀野なつへと顔を向けた。凜々しい立ち姿で窓を見ている彼女はどこか美しく感じた。


 「……なあ」

 「なんでしょう」

 「もし私が犯人を殺しかねない時だったら──」

 「……」


 波岩が黙っている。


 羽賀野なつが波岩に振り返った。


 「その時は私を、遠慮なく殺してくれ」


 そう言った彼女の瞳は──どこか、煌めいているように波岩は感じていた。

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