57 大久保什日と友井靖子の関係性
「誰も知ることのない関係性を……なぜ知っている?」
大久保は目を細めながら美桜を見据えた。その質問になつが答えた。
「それは私がこの目で実際に見たからだよ」
「実際に……? あぁ、どこかで見覚えのある顔だなと思ったが、まさかあの施設で暮らしていた子どもだったとは」
今まで浮かべることの無かった笑みを大久保は浮かべると、あの頃のことは思い出したくないのか、なつは「言うなよ」と悪態をついた。
「まさか此処に居るとは……。おっと、そうしたら君があの計画に参画していたことがバレてしまうのか」
そう言った途端、夕海が「あの計画?」と首を傾げた。その仕草になつは「聞かない方が良い」と釘を刺した。
「とにかくだ。友井靖子とどんな関係だったか教えろ。でないと、彼女がどうなるか、分かってるだろうな」
脅し口調で話すなつに対し、大久保は若干だが表情を揺らがせた。一息つかせた後、話し始めた。
「彼女は僕にとってとても優秀なアシストだったよ。優秀で、何にでも出来てしまう科学者だった。まあ、彼女の前職が優秀な人材に育て上げられていたかも知れないけどね。──彼女は最初、浮かない顔をしていたけど、次第に仕事を熟していくに連れて自信に満ち溢れる顔になっていったよ。本当に彼女の仕事ぶりは良かった。ただ……ただ、あの件を聞いた後、私はどうも彼女に対して不信感を募らせてね。それで、私はムンクに直接告げることにしたんだ。…………友井靖子が情報を流しているということをね」
「情報を流している? つまりそれは、彼女がスパイってことです?」
波岩がそう言うと、大久保は「ああ」と頷く。
「だがその情報はあくまで噂話だ。だが、もしその噂話が本当ならば、早急に対処するべきなのではないか……と思い、ムンクのところに向かって告げたんだ。そうしたら、彼女は彼によって捕まえられ、結果、禁断の実験を受けさせられてしまった」
「禁断の実験……?」と夕海。その反応に大久保は「知らなくて良いよ」と曖昧な答えでぼかした。
「これで良いかね。早くしないと彼女が大変な罪を犯すぞ」
「ああ。それでもう結構だ。ありがとな」
そう言い、なつが立ち上がって部屋を出ようとする。美桜がその姿を一瞥した後、大久保に「大変な罪ってなんですか」と緊迫感のある声を出した。身を乗り出しているため、大久保は少々仰け反っていた。
「これから報じられると思うよ。大々的に」
シニカルに笑みを浮かべる大久保。その表情に美桜は望んでいるような答えではなかったためか、軽く舌打ちを鳴らして大股で部屋を出ていった。その後を夕海が追い、なつも彼女らの姿を追って部屋を出た。
「…………君は行かないのかい?」
と、最後に残った波岩に視線をくべて大久保は話しかける。緊張した面持ちで波岩は、
「最後に一つだけ良いですか」
「構わんよ」
「──羽賀野なつは、どういう人なんですか」




