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48 女性の思惑

 「まだ知られてはいけない。あの人との約束だけは──絶対」


 女性の声が夜中、満月が照らしている路上に静かに溶け込む。


 女性は誰も歩いていない路上を歩きつつ、スマホを触っていた。画面に映っていたのは誰かとのトーク画面であり、そこには多くのメッセージがやりとりされていた。


 「あの人は別に親族とか、身内とか、内縁関係ではないし、かと言って特別な関係でもない。ただ、あの人とは人間関係を遙かに超えて大事な人であり、関係性が強い」


 また女性の独り言が夜中の路上に静かに響き渡る。


 「ただ……もうあの人は居ないことぐらい、分かってる。あの人はもういない。狩人たちに全て奪われたんだ。あの科学者に全て奪われたんだ。──あの実験のせいで」


 「私があの人に全てを見返したい。だけど、そうするための方法がない。どうすれば良い? そんなことを考えたって、元々の私はただの専業主婦。何を考えてもそれを実行に移すものがない」


 「どうすれば良いか。……じゃあ、私が一人で過去に起きたあの事件を模倣するしかない。そして、もっと昔──十九世紀に暗躍したあの殺人鬼が引き起こした連続の事件をも模倣する。そう私は決めたんだ。そうするしかない。そうしなければ、あの人は私に振り返ってくれないし、見捨てられるかも知れない」


 女性は溜息をついた。数秒、スマホの画面をジッと見つめる。





 ──嫌だなあ、私。なんでこんな思考になっちゃったんだろ。





 そう思いながら、女性はまた溜息をついた。今度は深かった。


 「……まあこの事件はもう終わりだ。出頭しよう」


 夜中の路上に彼女の独り言が呟いた後、女性は携帯の画面を触り──#110へ電話を掛けた。

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