4 保護施設
駅から歩いて十数分。ある保護施設に二人は来ていた。正面入り口には〝ひめゆり園〟と綴られており、二階建ての白い建物が彼らの網膜に映し出されていた。
波岩がドアベルを鳴らすと、『どちら様でしょうか』と若い女性の声がしてきた。波岩は「探偵事務所の者ですが」と答えると、二秒後には洋風な扉が開いた。
そこから顔を覗かせたのは、色白で若そうな女性であった。だが──その目の色は左右異なり、所謂オッドアイのような、左目は赤、右目は青といった感じだった。
「すいません。探偵事務所の者ですが」
と波岩は慇懃に声を出す。女性──胸につけられている名札にはエリカと綴られていた──が「探偵……?」と首を傾げた。
「ええ。ある失踪男性についてお伺いしたいのですが」
と言うと、目の前の女性は表情を曇らした。そのことに気がついた羽賀野なつは「何かマズいことでも?」と波岩を押し退けて問いかけた。
「ああ……いいえ……別に」
「なら大丈夫なはずだ。もしもマズい内容であったとしても、探偵には必ず守秘義務がある。その義務がある限り、誰に対して話すことはまずないから安心しろ」
強気な口調でなつが言う。少しずつ扉が開いていったのを確認した後、二人は施設の中へと入っていった。
「御協力感謝します」
波岩が一礼すると、「いえいえ」とエリカはかぶりを振った。
「何だか……探偵さんって刑事さんみたいですね」
と柔らかな笑みを浮かべるエリカに対し、なつは「まあ、そうだな」と頷いた。
「探偵と刑事。仕事は異なるが、基本的に調べるという点においては一緒だ。人から人へ伝わる情報を元に捜査する刑事と、探偵。基本的には同じだが、公務員か否かと言われれば別だ。警察官は公務員だから身分を名乗らないといけない。が、探偵は民間人であるし、任意で……まあボランティア感覚でやっているようなものだから、わざわざ身分を名乗らなくても良い。でも、名乗らずに調べようとすると、相手が激昂する可能性だって秘められている訳だし、こうして予め身分を明らかにする必要性があるのだがね……」
早口で長々となつはまくし立てると、「はぁ」とエリカは溜息をついた。
──まあ、分からなくもない。
時々羽賀野なつはこうして早口で、かつ長々と解説をし始めるのである。まるでどこかの推理小説に出てくるかのようなキャラクターに似ているなと、その都度波岩が感じるほど、その解説する口調には特徴的な響きが残っていた。
「さあ、話を聞くとするか。──どこで話をしたら良いんだ?」
と言い、なつがエリカに問うた瞬間、どこかお淑やかな、聞き覚えのある声が、なつと波岩の鼓膜を揺らした。波岩が背後を振り返ると、そこにはショートカットでボブにした茶髪の女性と、長髪で脚長、そして目を惹くような豊満な胸など一際良いスタイルを持った女性がそこに立っていた。
「こんにちは。羽賀野さんと──波岩さん」
茶髪でショートカットの髪型をした女性、鳴田夕海が可愛らしい笑みを浮かべてお辞儀をした。