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33 凄惨

 被害者は公園のベンチに横たわって倒れていた。東堂の報告通り、喉元や腹部から血が流れていることは勿論、殺される前はベンチで横たわって寝ていたのだろうか──口から唾液らしき液体が垂れており、目は瞑っていた。恐らく、何の抵抗することなく殺害されたのだろう、と美桜と夕海の二人は現場を見て感じていた。


 忙しなく鑑識たちが動いている中、夕海が「あれ」と呟いて被害者に近づく。周囲の刑事達や鑑識たちが怪訝に思う中、傍に立っていた美桜も彼女と同じく被害者に近づいた。肝心の夕海は被害者の傍でしゃがみ込み、ある箇所を見つめていた。


 「首元が何か?」

 と美桜。夕海が「うーん」と首を傾げつつも、

 「どうも何か気になるんですよね」

 「気になる?」

 「なんだろ……誰かに噛まれたような痕だなぁって」


 そう夕海が美桜に言うと、周囲の刑事達や鑑識たちが少し目を見開かせた。彼らの反応に美桜が目線をくべたものの、驚くこともなくすぐにしゃがんでいる夕海に目線を戻した。


 「どうかしました?」

 「いや、何も。……誰かに噛まれたような痕って?」

 「ああその痕は……」


 そう言い、夕海は被害者の左首を指差した。そこは日焼けしていたのだろうか、肌が小麦色になっていた。彼女が指差していた部分はまるで吸血者が血を吸ったような痕だった。


 「……吸血か」

 「ええ。犯人、もしかしたら」


 と言ったところで、美桜は表情を重くさせた。彼女の表情に何となく察しがついたのか、夕海もまた美桜と似たような表情になっていく。


 「……隠蔽されますかね」

 「させない。そんなこと、絶対」


 即答で少し口調を荒くして美桜は小声で呟く。決意に満ちたような目つきで自分のことを見てきたことが感慨深くなっていたのか、夕海もまた美桜と同じく決意に満ちるように目を細めた。


 「この事件、絶対に何が何でも解決しましょう」


 二人の声が重ね合った。

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