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28 罪悪感

 怖い。何処に連れて行かれるかが、怖い。


 それだけじゃない。


 僕と一緒に連れて行かれている相手が、僕を苛めている人だ。


 だから、余計に怖い。


 学校帰り、いつも通りによく歩く道を歩いていると、目の前に知らない人達が現れては、僕の口を塞ぎ目の前を暗くする。最初は大声で〝助けてー‼〟と叫んだものの、首筋に冷たい物を当てられて眠くなった。あれが何かは分からないけど、恐らくよくドラマで見るスタンガンと呼ばれるやつなんだと思う。


 目を覚ますと、目の前には僕を苛めている人が居た。その人も僕と同じく誰かに連れ去られたと言っていたけど、あんまり信じなかった。だって、いじめの張本人なんだもん。


 どうして僕といじめっ子が連れ去られているかは全く知らないけど、とにかく嫌な気分が車の中に続いたことは確かだ。


 どこかに着いた時、外から降りろと命令口調で言われた。僕ともう一人の子はその通りに動き──というより、半強制的に動かざるを得ない状況だったけど──、またどこか別の場所に移動させられた。


 何だか椅子に座らせた後、目隠しが外されたけど、全く知らない場所と知らない人達で分からなかった。知ってる人がゼロで気味悪い場所だったから一刻も早く出たかったけど、ある科学者が僕たちの目の前に現れてこう言ったんだ。

 




 〝君たちは選ばれし者だ。ここで実験を受ければ、人間を遙かに超えた存在になれる〟

 




 って。僕はその言葉を信じ、実験を受けた。


 物凄く痛かった──特に頭痛が──けど、自分の中で何かが変っていくんだなって思えて、少しだけ心地良かった。心の底から力が湧いてくる気分がして、気分が良かった。





 

 だから──あんなことをしちゃったのかな。

 





 気づいたらどこか知らない河川敷に居たんだ。正確に言えば一度父と母で来たことのある河川敷で、ただ目の前の光景に言葉が出なかった。


 そう。僕はいじめっ子を無残にも殺してしまったこと。


 目立った外傷はないけど、首筋にまるで吸血鬼が血を吸ったような痕が残っていた。それに胸にナイフのような傷があった。


 自分が殺した。


 そのことに、僕は泣いた。


 いじめっ子だけど。


 いじめっ子はいじめっ子だけど、同じ人間。


 僕と同じ人間。


 それなのに、殺した。


 厭だ。


 厭すぎる。


 こんなの、夢だと信じたい。


 けど、夢じゃない。


 現実。


 だから僕は──飛び降りた。

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