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26 続々

 「さすがはあの一族。俺が狩人の時にいじめを受けていたなんて──」

 「朝飯前だ」


 となつが建英の褒め言葉に被せると、彼はフッと鼻息を吹いた。だがその二人の間に入っていけず、波岩は「えと……いじめって?」ときょとんとした。


 「この人は狩人をやっている時に陰口など言ったいじめを受けていたんだ。彼の記憶を辿っていると、最初のうちは軽く済んでいたものが次第にエスカレートしていき──最後は彼自身が辞職する結末になっていったんだ。酷い話だ」


 人差し指を左右に動かしながらなつは話していくと、「ああ、その通りだ」と建英が答える。その後に「……でもまあ、確かにあの一族の末裔だから正しいよな」と最後に付け足したが、波岩にとってその〝あの一族〟がピンと来ず、頭の中でハテナマークが浮かんだままだった。


 「確かに俺は狩人を辞める原因になったのはいじめだ。そのいじめが妻──と言ってももう今は居ないけどな──と息子に飛び火したんだ。その息子も今はもう居ない。どうしようもないやつだ、俺は」


 自虐げに呟く建英。その様子を見ていたなつは「まあ、そりゃあそうだよな」と否定せずに言った。その言葉に若干建英は口を開きかけたものの、咳払いを一度して口籠もった。


 「それに、自分の子どもに強く当たったな?」


 罰が悪そうに建英は目線をわざとらしく逸らしたが、構わずなつは話し続けた。建英のそんな態度に思わず波岩は口を歪めた。


 「発端は息子が人助けをしたことだ。なかなか帰って来ない中、夕刻を過ぎた夜七時頃に息子の茂樹が自宅に帰宅。どうしてこんな時間に帰宅したんだ──と泥塗れの彼を問うと、彼は〝人助けをしてたんだ〟と答えた。そのことに逆に苛立ってしまったお前は、息子に対し罵声を浴びせた。最初は罵声だけで留まったものの、エスカレートしていくうちに暴力をも振うようになっていった。──違うか?」


 確認するように視線を建英にくべたなつ。彼女の視線を見た後、彼は「……ああ」と居心地悪そうにして頷いた。その過去の行動が自業自得だと今更理解しても、息子は帰ってこない。そんなことを悟っていたのか──建英は少し溜息をついた。


 「あと最後に訊いておく」

 「なんだ?」


 と建英。一度唇を湿らせたなつは少しだけ口角を上げた。


 「河川敷で発見された屍体は──あんたの息子が殺したのか?」

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